2024年5月の税務
5月10日
●4月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
5月15日
●特別農業所得者の承認申請
5月31日
●個人の道府県民税及び市町村民税の特別徴収税額の通知
●3月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●9月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の2月、3月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(1月決算法人は2ヶ月分、個人事業者は3ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●確定申告税額の延納届出に係る延納税額の納付
○自動車税(種別割)の納付(5月中において都道府県の条例で定める日)
○鉱区税の納付(5月中において都道府県の条例で定める日)
国税庁からのお知らせ 令和7年1月から控えは印なしに
◆申告書等の控えに収受日付印を押さない
国税庁は令和6年1月4日に、令和7年1月以降は申告書等の控えに収受日付印の押捺を行わないこととする、と発表しました。対象となる「申告書等」とは、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他の書類の他、国税庁・国税局・税務署に提出される全ての文書とのことです。
令和7年1月からの書面申告等における申告書等の送付時には、申告書等の正本(提出用)のみを提出してください、とWeb上でお願いしています。また、必要に応じて自身で控えを作成、提出年月日の記録・管理をするようにも呼びかけています。
◆申告書等の提出事実を証明する方法
例えば個人が融資を受ける、奨学金の申請を行う、保育園の手続きする、等の際に確定申告書の控えを要求されることがあります。ただ、この控えについては「収受印があること」が控えたりうる要件であり、収受印がない控えについては、個人の収入等が証明できないため、各種手続きに利用できない可能性が大です。
オンラインサービスを利用せず、紙媒体で効力のある収入証明を手に入れる場合には、税務署に対して「保有個人情報の開示請求」を行うか、「納税証明書の交付請求」を行う必要があります。
個人情報の開示請求は手数料300円、納税証明書は税目ごと1年度1枚につき400円です。
◆オンラインなら無料
e-Taxを利用した申告であれば、申告等データの送信が完了した後に、税務署からの受信通知がメッセージボックスに格納されます。ここから申告書等のPDFファイルを無料でダウンロードすることができ、こちらには受付日時等が記載されますから、旧来の控えの役割を果たすものが欲しい人はe-Taxを活用しなさいね、という風に聞こえます。
国税庁は税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めているとしていて、その一環の措置とのことなのですが、便利な機能が増えて利便性が向上する方が多い一方、インターネット等のサービスを上手く使えない方にとっては不便になることは確かです。また、不便ならまだしも「手続き等ができない人」が出てきてしまわないか、少し心配になります。
従業員の旅費交通費精算と適格請求書(=インボイス)の保存
◆旅費交通費にかかる3つのインボイス特例
適格請求書等保存方式の下では、請求書等の受領が困難な理由がある場合を除き、インボイスの保存が仕入税額控除の要件となっています。困難なものの中で、普段の経理実務で発生する旅費交通費に関するものに、下記の3つの特例があります。
(1)公共交通機関特例
3万円未満の公共交通機関(船舶、バスまたは鉄道)での旅客運送では、仕入側の会社は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。適用には、帳簿に「公共交通機関特例」等との記載が必要です。
(2)入場券等回収特例
3万円以上の公共交通機関利用で簡易請求書の記載事項が記載された乗車券が回収される場合は、通常の記載事項に加え、帳簿に「入場券等回収特例」等と記載のほか、公共交通機関の住所等の記載も必要です。
(3)出張旅費特例
会社が従業員に出張旅費等を支給する場合には、「その旅行に通常必要であると認められる部分」の金額は、帳簿のみの保存で仕入税額控除OKです。適用するには、通常の記載事項に加え、帳簿に「出張旅費等特例」などと記載することが必要となります。
◆旅費規程に基づく立替経費精算書での精算
複雑にすると混乱しますので、これまで社内で使ってきた経費精算システムを踏襲し、新たに必要となった事項のみ追加する方が良いでしょう。仕入れの相手先名の横にインボイス番号を記載する欄を設け、近郊の公共交通機関利用の場合はそこに「公共交通機関特例」と記載するなどです。
課税仕入れの相手方を従業員とし、従業員が個人で取得した適格請求書まで辿れるようにしておけば、旅費交通費精算のインボイス保存の問題に対処できます。各社で処理フローを想定し、従業員に周知して、早いうちに慣れてもらいましょう。
◆会計システムのエラーメッセージへの対応
会計ソフトのインボイス制度への対応で、「課税仕入れとしていますが登録事業者ではありません」や「取引金額が1万円未満のため全額仕入控除できます(少額特例対象会社)」などのエラーメッセージでその都度作業が止まってしまうことがあります。それでなくともインボイス番号の確認作業で経理担当の作業量は大幅に増えています。
各社で環境は違いますが、自社のエラーメッセージ対応策を見つけ、無駄な時間をできるだけ回避するようにしましょう。
NISAへの誘いと現NISA
◆老後への早期の準備を
老後の生活を豊かにするには、健康、生きがい、まとまった資金が必要です。健康と生きがいは、運動や食事や趣味や人間関係などへとテーマが拡がっていきますが、老後生活資金については、年金の外は若い時からの資産形成に拠らざるを得ません。
総務省の家計調査報告では、65歳以上の夫婦世帯・単身世帯の平均値として、消費支出に対し16.8%の収入不足となっている、と報告されています。この不足を補うに足る余裕資金の確保が不可欠です。
政府は預金だけではない資産形成として、投資をすることを勧めています。株式などの投資で出た利益を非課税とするNISAやiDeCoが代表例です。確かに、預金で持つよりも資産を増やせるのが投資の魅力です。預金と異なり元本が減る可能性はありますが、長い期間でやり方を工夫すれば大きな損失を出す可能性は減らせます。
◆NISAで1800万円の資産形成を
NISAとは、個人の投資による株式・投資信託等の配当・譲渡益等を非課税とする税制優遇制度で、今年の税制改正で大改造されました。
令和6年1月1日からの新NISAは、非課税期間が無期限となり、年120万円限度の安全性重視型の「つみたて投資枠」と、年240万円限度の自己責任型の「成長投資枠」とになります。両枠併用は可です。
なお、無期限化に伴い、非課税保有限度額が、両投資枠全体で1800万円(成長投資枠のみでは1200万円)の制限が設けられました。最低このくらいの老後資金を長期的に蓄積しておきなさい、という政府メッセージのように見えます。
◆旧NISAと新NISAの併用
令和5年末までの現行NISAは新NISAとは別建てなので、令和5年12月31日までで打止めとなり、以後は5年、20年の非課税期間満了経過とともに旧NISAは消滅となり、順次課税口座にその時の時価額で移管されることになります。
しかし、新NISAが出来たからと言って、旧NISAに不都合があったわけではありません。2023年中に旧NISAをはじめれば、生涯非課税で運用できる金額が増えることになります。少しでも早く積立投資を始め、少しでも多くの非課税枠を確保することの意味では、新NISAを待たずに現NISAに挑戦すべきです。