発行日:2026年11月06日
2026年11月の税務
11月10日
●10月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
11月16日
●所得税の予定納税額の減額申請
11月30日
●所得税の予定納税額の納付(第2期分)
●特別農業所得者の所得税の予定納税額の納付
●9月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●3月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の8月、9月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(7月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○個人事業税の納付(第2期分)(11月中において都道府県の条例で定める日)
2026年版中小企業白書を読み解く 金利上昇と資金調達の今
◆金利は高止まり、借入負担が増している
日本銀行が利上げ方向へと政策を転換する中、中小企業の資金調達環境は大きく変わりつつあります。2026年版中小企業白書によると、中小企業の借入金利水準判断DIは足下では若干低下しているものの、依然として高い水準が続いており、多くの企業が金利上昇の重荷を肌で感じていることが分かります。長らく続いたゼロ金利・低金利時代が終わりを告げ、借入コストを意識した財務管理が改めて強く求められる局面に入っています。変動金利で借入を行っている企業は、返済額の増加を具体的に試算した上で、手を打つタイミングを逃さないことが今まさに急務と言えます。
◆円安と物価上昇がコストを直撃する
さらに深刻なのが、円安と物価上昇の長期化です。2025年度も歴史的な円安水準は継続しており、円ベースで見た輸入物価指数は高い水準が続いています。国内企業物価指数と消費者物価指数も引き続き上昇傾向にあります。原材料・エネルギー・食品などを仕入れる中小企業にとってコスト増加圧力は一段と強まっており、価格転嫁が十分に進まない企業ほど収益が削られ続けるという厳しい現実があります。自社のコスト構造がどう変化しているか、専門家に相談してもいいかもしれません。
◆借入金増加と現預金横ばいが示すリスク
財務省「法人企業統計調査年報」によると、中小企業の借入金等は直近では増加に転じており、現預金残高は横ばいで推移しています。借入金が増加傾向にある中、金利負担の増加が重なることで資金繰りへの影響が顕在化しやすい状況が続いています。こうした時こそ手元流動性の水準を定期的に確認し、いざというときのために早めに手を打てる態勢を整えておくことが重要な意思決定と言えるでしょう。
◆資金繰りの「見える化」が最初の一手
こうした局面だからこそ、自社の資金繰り状況を「見える化」することが最初の一手です。借入金が月商の何か月分にあたるか、返済に何年かかるか、この2つの数字を把握するだけで、金融機関との交渉も資金調達の判断も大きく変わります。金利優遇のある政策金融の活用も選択肢に入れながら、手を打つなら早いほど選択肢は広がります。
外貨運用の落とし穴 最高裁が「課税あり」と判断
◆為替差益は「換えた瞬間」に課税される
海外で資産を運用する経営者が増えています。円安が続くなか、外貨建ての金融商品や海外口座を活用してリターンを追う動きは自然なことですが、今年6月に出た最高裁判決が、その運用に伴う税務リスクを明確に示しました。令和8年6月16日、最高裁判所は、スイスの金融機関に運用を一任していた居住者に対する更正処分が適法であるとする判断を下しました。
問題となったのは、ドルでユーロを買う、外貨で外国株式を購入するといった「外貨同士の交換」です。外貨を円に戻したときだけ課税されると思っている方が多いのですが、外貨から別の外貨に換えたその瞬間にも、為替差益が「雑所得」として確定し、確定申告が必要になります。
◆「任せているから知らない」では通らない
今回の事案では、本人が直接操作するわけではなく、外国の金融機関に運用を「一任」していました。それでも最高裁は、個々の通貨交換や外貨建て有価証券の取得のたびに課税関係が生じると明示しました。「運用はプロに任せているので自分には関係ない」という認識は、税務上は通用しません。
海外の金融機関が発行する運用報告書には円換算の損益が記載されていないことが多く、ご自身で取引明細を取り寄せ、取引ごとに円換算額を確認する必要があります。
◆申告漏れが発覚したときのリスク
申告漏れが税務署に把握された場合、本来の税額に加えて過少申告加算税が課されます。さらに、故意に隠したと認定されれば重加算税の対象となる可能性もあります。
近年、国際的な情報交換制度(CRS)の整備により、海外口座の残高や取引状況は各国税務当局間で共有されており、「海外だからわからない」という認識はもはや通用しません。
◆備えは今からでも遅くありません
外貨建て資産を保有されている方にまずお願いしたいのは、海外口座の取引明細を金融機関に請求し、外貨同士の交換や外貨建て有価証券の取得が発生していないかを年ごとに確認することです。取引日ごとの円換算額の計算は地道な作業ですが、正確な申告の土台となります。心当たりのある方は、早めに専門家へご相談ください。
遺留分侵害に対する課税
円滑な財産承継は親の願いですが、遺留分を考慮する必要があります。
◆遺留分とは
民法は相続人の生活保障、公平な財産分配を目的として、財産が特定の者に集中して遺贈・贈与されることのないよう相続人に財産の一定割合を遺留分として取得する権利を与えています。相続人が被相続人の父母のみの場合、遺留分の算定の基礎となる財産の価額の3分の1、それ以外の場合は2分の1に法定相続分または代襲相続人の相続分を乗じた額が各相続人の遺留分の額となります。なお、兄弟姉妹に遺留分を取得する権利はありません。
◆遺留分侵害のある遺言の効力
遺留分を侵害する遺言がされても遺言の効力は失われません。受遺者は被相続人の遺言に従って財産を取得し、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を受遺者に請求できます。
公正証書遺言では公証人は遺言の内容によって遺留分侵害が起きるリスクを説明してくれます。遺言者は立ち止まって遺言内容を再考することができます。また、法的効力はありませんが、遺言書に付言事項として遺言者の思いを遺すこともできます。
◆課税への影響
遺留分侵害額請求により財産を移転させると課税に影響がでます。相続税の申告書を提出後、遺留分侵害額請求によって金銭の交付が行われた場合、金銭を取得した相続人が新たに相続税の申告を要するときは期限後申告書を提出することができ、既に申告していた相続税額が不足する時は修正申告書を提出できます。また、金銭を支払った受遺者・受贈者は、相続税額が過大となるため、遺留分侵害額請求による支払額が確定したことを知った日から4か月以内に更正の請求を行うことができます。
なお、受遺者・受贈者が侵害額請求債務の履行を金銭ではなく、不動産や株式などの財産で行った場合、その財産の譲渡所得には所得税が課税されます。
◆遺言があっても遺産分割協議は可能
遺言書とは別に相続人全員が合意すれば遺言と異なる遺産分割を行うこともできます。この場合、受贈者は遺贈を放棄し、各相続人は遺産分割協議に従って取得したものとして扱われ、財産の額に応じて通常どおりに相続税の申告を行うことになります。また遺留分の放棄によって贈与税が課税されることはありません。
最近の活動状況について
お世話になっております。税理士の上原章裕です。
最近は相続税及び個人開業の方の新規ご相談が大変増えております。それに加えて税理士会の業務もあるため、優先順位をつけて取り組んでおります。もちろん期限は意識していますが、合間を縫って必要な研修も欠かさず受講するので、メールの返信等の作業が夜遅くになりがちです。
このようにおかげさまで多忙な毎日ですが、高市首相とは違い睡眠はきちんととっておりますのでご安心ください。
ちなみに先日、以前から所属している税理士団体と青山学院大学の学生とで毎年恒例の税法ディベート大会に参加してきました。白熱して燃え尽きているのですが、明日11月7日土曜日は名古屋の税理士と同大会が行われ、私も駆り出されることになっております。新幹線で敵地に乗り込むのですが、戦いの前なので間違えてビールを飲まないようにしないと考えながら明日に備えています。