24年1月から始まった新NISAでは、非課税期間が無期限になり、つみたて投資枠と成長投資枠の合計で年間360万円まで投資できるようになります。日本人はアメリカなどの諸外国に比べると、貯蓄好きだといわれますが、この新NISAの登場は、貯蓄を大きく動かすインパクトがあるかもしれません。
政府の狙い通り、資金がほどほどに国内株式等に向かえばいいのですが、そこに留まる保証はありません。金利が高く、成長力も日本より高い海外に一気に資金が向かう可能性もあります。人によっては、止まらない円安傾向を背景に為替差益狙いということもあります。その結果、日本の金融緩和の基盤であった国内貯蓄が大きく減少するといった事態に至るかもしれません。一方、防衛費や生活支援支出の増大で財政の赤字傾向は続きますから、今までのように低金利での国債発行は難しくなります。
これまで金利上昇は、景気が良くなり資金需要が活発化することにより起こると想定されていました。好景気になれば、金利上昇のデメリットを相殺できます。しかし、景気が悪いまま、資金不足により金利上昇することも頭に入れておかなければなりません。そうなると、かなり苦しい状況に追い込まれます。
「貯蓄から投資」のスローガンの効力が適当なところに収まればいいのですが、インフレによる貯蓄の目減り効果の後押しを受け、思いのほかに効きすぎると「眠れる獅子」を目覚めさせることになるかもしれないのです。新NISAが資金の流れにどのような影響を与えるのかに注目したいと思います。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)