日本の大企業の雇用形態はメンバーシップ型からジョブ型に変わりつつあります。一口にジョブ型、メンバーシップ型といっても、様々なバリエーションがありますが、類型的には次のように整理されます。ジョブ型は明確に定義された職務に対し、そのスキルを持った人間を雇用します。給料はスキルに対して支払われますから、年齢に関係なくスキル次第で高い給料を受け取ることができます。一方、メンバーシップ型は、自分が会社で果たすべきジョブは事前に明確になっておらず、どこでどんな仕事をするかは会社の都合によります。給与はその会社に所属していることの対価ですから、所属期間が長いほど、つまり年功序列を基軸に決められます。
つまり、ジョブ型ではどんな仕事をするのかは個人が主体的に選びます。そして、その仕事をするために必要なスキルは自ら備えなければなりません。一方、メンバーシップ型はどんな仕事をするかは会社の都合に左右され、個人が携わる仕事は受動的に決められることになります。したがって、仕事に必要なスキルはOJT等で会社側が準備することになります。仕事を主体的に選ぶのか、あるいは受動的に受け入れるのかの違いは決定的に重要です。
個人にとっては、主体的に選択する方が好ましいように見えますが、全く白紙な状況で、多様な選択肢の中から、一つを選び出すのは、それほど簡単なことではありません。外部の力で一定の枠がはめられ、選択肢をある程度絞った上で、選択する方が楽だということもあるからです。我々日本人はどちらかというと、校則や規則、あるいはその場の同調圧力といったもので、組織の流れに身を任せ、個人の選択の余地をできるだけ狭める仕方で生きてきたように思います。そうした環境で育ってきた人間にとっては、自分の一生を企業に預ける形のメンバーシップ型雇用は割と受け入れやすいものでした。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)