一方、ジョブ型雇用では会社と個人の利害は一致せず、個人は純粋に個人の利得を追求することになります。忠誠を尽くす対象は会社ではなく、職務になり、その職務を遂行するためのスキルの取得が必要になります。会社からは与えられた職務をこなすことだけを求められ、それ以上の会社の将来的発展等の要求はありません。ですから、職務を早くこなして時間が空けば、他の会社の仕事をする副業は当然認められるようになるでしょう。また、自身の持つスキルが他社においても有用であれば、転職することも可能になります。報酬を左右するのは忠誠心といった漠然としたものではなく、当人のスキル次第ということになりますから、どのようなスキルを取得するかが決定的に重要になります。
他方、自分が身につけようとしたスキルが時代のニーズに合わなくなり、必要とされなくなるという危険性もあることに注意しなければなりません。
ジョブ型とメンバーシップ型のどちらを選択するにしろ、成功するには相応の努力が必要となることは間違いありません。努力の向かう先が会社なのか、職務(スキル)なのかの違いになります。
どちらにも一長一短あり、個人の能力や価値観に応じて、選択するしかありません。煎じ詰めれば、仕事に対する誇りを「○○商事、△△自動車の社員」であることに求めるのか、「経理や法務等の職務の専門家」であることに求めるかの違いになるでしょう。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)