発行日:2025年11月10日
2025年11月の税務
11月10日
●10月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
11月17日
●所得税の予定納税額の減額申請
12月1日
●所得税の予定納税額の納付(第2期分)
●特別農業所得者の所得税の予定納税額の納付
●9月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●3月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の8月、9月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(7月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○個人事業税の納付(第2期分)(11月中において都道府県の条例で定める日)
中小企業白書を読み解く 雇用維持のための対策を
◆共通課題としての人材確保
2025年版中小企業白書によると、全国17,848者の中小企業・小規模事業者を対象とした帝国データバンクの調査において、「人材確保」が最重要課題として挙げられた割合が最も高い結果となりました。中規模企業では「省力化・生産性向上」、小規模事業者では「事業承継」がそれに続きますが、いずれにせよ人材の確保・活用が経営基盤の安定に直結することは明白です。業種・企業規模を問わず、雇用を取り巻く環境が厳しさを増している現状が浮き彫りとなりました。
◆従業員不足の構造的背景
同白書では、従業員数の「過不足率」に関する景況調査も示されており、特に中規模企業で人材の「不足感」が強く、建設業においてはその傾向が顕著です。これは一過性の現象ではなく、労働人口の減少や業種ごとの働き手確保の難しさなど、構造的な課題が背景にあると分析されます。このような中で、採用戦略の見直しや職場環境の改善を通じて、いかに「選ばれる企業」になるかが問われています。
◆実務で意識すべきポイント
人材不足への対応としては、単に採用枠を増やすのではなく、定着率向上に向けた工夫が求められます。
例えば、短時間勤務制度やリモートワーク制度の導入による柔軟な働き方の提供、資格取得支援などキャリア形成への投資、職場内コミュニケーションの活性化などが挙げられます。加えて、DXや省力化設備の導入を通じて限られた人材で最大限の生産性を確保する施策も有効です。助成金制度の活用や、社会保険労務士との連携による就業規則の整備も併せて検討したいところです。
◆次世代に向けた布石を
少子化が進む現代において人材の確保は今後ますます難易度が増すと予想されます。事業承継と絡めた「次世代人材」の育成、外国人材や高齢者の戦力化、業務の見直しによる人手依存からの脱却など、中長期的視点を持った戦略が必要です。労働市場の変化を的確に捉え、外部支援を活用しながら、自社に適した雇用維持・拡大施策を構築することが、これからの中小企業経営における生存戦略の鍵となります。
中小企業白書を読み解く DXがもたらす変革
◆伸び悩む生産性の現状
労働生産性については、大企業では増加傾向にある一方で、中規模企業や小規模事業者ではおおむね横ばいが続いており、約10年前と比較すると緩やかに減少しています。コロナ禍からの反動や需要回復による一時的な上昇を除けば、大きな改善は見られません。特に小規模事業者では、業種により生産性格差が顕著で、製造業や情報通信業に比べ、サービス業・小売業では依然として低水準が続いています。人手不足の恒常化が続く中で、少人数で成果を出す体制整備が急務です。
◆設備投資に見る差と課題
2023年度の中小企業の設備投資額は増加傾向にありましたが、その内容には大きなばらつきがあります。大企業に比べて中小企業は老朽更新に偏り、収益向上や競争力強化を目的とした戦略的投資が限られています。また、資金繰りの問題や先行き不安から投資に踏み切れない企業も多く、結果として労働生産性の伸びを阻害しています。
ここで重要なのが、「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」といった支援策を活用し、中長期の視点で投資計画を構築することです。
◆デジタル化の進捗と課題
DXへの対応状況は、企業間で明確な差が開いています。大企業やIT関連業種では一定の進捗がある一方、中小企業では「そもそも何から始めて良いかわからない」という声も根強く、社内のIT人材不足や初期コストへの懸念が障壁となっています。
しかしながら、受発注業務や会計処理のクラウド化、在庫管理の自動化といった小規模な取り組みでも、着実な効果を上げている事例が増えており、まずは「できるところから始める」ことが重要です。
◆今求められる経営の姿勢
生産性向上やDXは、一朝一夕で実現できるものではありません。重要なのは、経営者自らが「変わる覚悟」を持ち、社員を巻き込みながら一歩ずつ進める姿勢です。補助金申請時の事業計画策定においても、自社の強み・弱みを見つめ直すことが第一歩となります。税理士や社労士など専門家の支援も活用しながら、単なる制度対応に終わらせず、企業体質そのものを変革する視点でDX・投資戦略を立てることが、未来の競争力に直結します。
-相続税の債務控除-『確実な債務』
相続税の申告では被相続人の債務は相続財産から控除されます。この場合、控除される債務は「確実な債務」に限るとされています。被相続人の借入金は控除される債務の代表例ですが、その債務が相続の後に債務免除の対象となっていた場合、債務控除できるのでしょうか。
◆確実な債務の要件
債務控除を受けるためには、債務が存在していること、及び債権者より債務弁済の履行が義務づけられていることが要件とされており、この要件を満たす債務を「確実な債務」と呼んでいます。
◆債務免除は担税力を減殺しない
相続税は財産を取得した相続人に担税力を認めて課税されます。また、被相続人の借入金は相続財産から弁済して担税力が減殺されるので遺産総額から債務額を控除することになります。しかし、その債務が免除されることが確実とされる場合、担税力は減殺されないので債務控除は認められないことになります。
◆債務免除に停止条件がある場合
被相続人の借入金のうち一定金額を期日までに弁済すれば、残額は弁済を免除する停止条件が借入契約に付されていた場合、その成就がほぼ確実であると見込まれるときは債務控除を認めない判例があります。
しかし、被相続人の死亡時に債務免除に必要な弁済が未達であれば、相続人に弁済の履行義務はあるので、残債務は「確実な債務」と言えるのではないでしょうか。
◆債務免除は確実な債務でないとされた裁判
実際の裁判事例です。相続人は被相続人の16億円の借入債務を引き継ぎ、銀行との和解による債務免除に必要な金額を弁済して残額約9億円の免除を受けました。そして相続税の申告では相続開始時に債務免除を受けることは確実であったとして約9億円の残債務について債務控除せず、増加した純資産額に対する相続税を負担しました。ところが債務免除益にも所得税が課税されて二重課税となったため、相続人は所得税の非課税を求めて訴訟を起こしました。
一審、二審では相続人の資産状況から債務免除に必要な分割金は優に支払うことができ、残債務9億円は「確実な債務」でなかったとされました。しかし、相続人が仮に相続時に停止条件が成就していなかったことを理由に債務免除部分の債務を「確実な債務」として申告していた場合、裁判は同じ展開になったのか疑問が残ります。