[相談]
このたび、我が社では交通費の支給規定を改正し、従業員だけでなく役員に対しても通勤手当を支給することとなりました。この通勤手当について、
①法人税法上の役員給与に含まれるのかどうか、
②所得税が課税されるのかどうか、
を教えてください。なお、通勤手当の支給基準は一般従業員と同様であり、その額は所得税法上の非課税通勤費の範囲内であることを申し添えます。
[回答]
ご相談の通勤手当については、①役員給与とは別に経理すれば法人税法上の役員給与には含まれず、②所得税法上は非課税となります。
[解説]
1. 法人税法上の役員給与の原則的なルール
法人税法上の役員給与には、実質的にその役員等に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(経済的利益)も含まれることと定められています。
具体的には、役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額や、役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額などが該当します。
今回のご相談の通勤手当については、上記の経済的利益に該当するものと考えられるため、法人税法上、原則的には役員給与に含まれると考えられます。
2. 通勤手当の所得税法上の取扱い
所得税法上、通常の給与に加算して支給する通勤手当は、一定の限度額(例:電車やバスだけを利用して通勤している場合には、原則として通勤定期券の金額)までは非課税と定められています。
3. 役員給与に含まれない経済的利益
上記1.で述べた通り、役員に対する経済的利益は法人税法上の役員給与に含まれます。
ただし、その経済的利益が所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、その法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものと定められています。
今回のご相談の通勤手当は、会社で定めた交通費支給規定に基づき、一般従業員と同様に支給し、かつ、その支給額は所得税法上の非課税通勤費の範囲内となっています。
したがって、会社の経理において役員給与とは別に経理(例:勘定科目を旅費交通費として経理)すれば、法人税法上の役員給与には含まれないこととなります。
[参考]
法法34、所法9、所令20の2、法基通9-2-9、9-2-10
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