小田満事務所
税理士・行政書士・事業承継コンサルタント
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税理士事務所を事業譲渡した場合の課税関係【2分の2】
税理士事務所の事業譲渡と譲渡代金の分割払いの場合の課税関係(その2)
税理士 小田 満
2 所得区分が譲渡所得に該当する場合
ところが、特に税理士事務所の事業承継の場面において、財務ソフトを含む事務所の設備等のほか多数の従業員も含め、一切合切居抜きで事務所が譲渡されるケースがある。そこには長年かかって築いてきた顧問先との信頼関係、就業規則(例えば顧客管理、集金システム、事務量配分)やIT環境の整備など、一朝一夕には醸成不可能なノウハウ等が取引の対象として含まれている。
このようなケースは要するに、顧問先との契約を一身専属として位置付けつつも、その域を超えるほど多数の顧問先を擁する企業としての事務所の存在が認識されており、その企業としての値打ちが取引の対象になっているのである。
そしてその取引に係る対価の額としては、年間顧問料の総額を計算の基礎として算定されているケース(例えば年間顧問料の総額に0.7を乗じた金額)が多いようである。これはまさしく、事務所の引継ぎ後も顧問先が新たな税理士(税理士法人)と継続して契約していただけること(事前の根回し)が前提となっているためであり、そこに「顧問先の譲渡」という文字は馴染まないものの、その契約による収入と従業員給与等の支出とがセットで取引の対象になっているからである。
この対価の額の計算方法は、現在のところ税理士事務所特有のもののようである。しかし、計算方法は当然いろいろあり得るわけで、例えば、事業承継のためのM&Aの場合であれば、「時価純資産額+営業権」とする例が多いと言われている。その場合の「営業権」は、例えば「税引後利益×3年」とか、「(税引前利益-(時価純資産額×期待利子率))×3年」として計算される。後者の算式中の「税引前利益-(時価純資産額×期待利子率)」は「超過収益」といわれるものである。「3年」とあるのはいずれも「営業権持続年数」であり、必ずしも3年でなくともよい。
こういったケースは、単なる顧問先の紹介にとどまるものではなく、いわゆる「事業譲渡」に類似するものと考えられるので、前掲の雑所得説をストレートに当てはめるべきか否かの問題がある。算定の基礎が顧問料の金額になっている点だけをとらえて、単純に全額を雑所得の収入金額とするのか。器具備品やソフトなどの譲渡所得の基因となる資産を抜き出してその部分の時価額を譲渡所得の収入金額とし、残額を雑所得の収入金額とするのか。それとも企業としての資産価値の譲渡による所得として全額を譲渡所得の収入金額とするのか。判断の分かれるところであり、今後の課題であると考える。
3 顧問先引継ぎ料の課税年分
顧問先の紹介料あるいは引継料などの名目で支払を受ける対価による所得の収入金額の計上時期は、原則としてその契約の成立した日となる(所法36①)。
しかし、お尋ねのケースの対価は、一括払いではなく5年間にわたって支払われるとのことであり、契約の時点で金額が確定するのはその当初の年分の400万円だけであって、以降4年分はそれぞれ各年の支払時期にならなければ金額が確定しないとのことである。このような契約内容の場合、それぞれ各年の支払時期において再度当事者間において計数的なチェックと協議が行われて始めて金額が確定するであろうし、仮に新たな税理士(税理士法人)が廃業したときには支払義務は生じないであろうから、収入金額の計上時期としては、それぞれの年の支払金額が確定した段階においてその確定した金額を収入金額に計上することになるものと考える。 (了)
税理士 小田 満
2 所得区分が譲渡所得に該当する場合
ところが、特に税理士事務所の事業承継の場面において、財務ソフトを含む事務所の設備等のほか多数の従業員も含め、一切合切居抜きで事務所が譲渡されるケースがある。そこには長年かかって築いてきた顧問先との信頼関係、就業規則(例えば顧客管理、集金システム、事務量配分)やIT環境の整備など、一朝一夕には醸成不可能なノウハウ等が取引の対象として含まれている。
このようなケースは要するに、顧問先との契約を一身専属として位置付けつつも、その域を超えるほど多数の顧問先を擁する企業としての事務所の存在が認識されており、その企業としての値打ちが取引の対象になっているのである。
そしてその取引に係る対価の額としては、年間顧問料の総額を計算の基礎として算定されているケース(例えば年間顧問料の総額に0.7を乗じた金額)が多いようである。これはまさしく、事務所の引継ぎ後も顧問先が新たな税理士(税理士法人)と継続して契約していただけること(事前の根回し)が前提となっているためであり、そこに「顧問先の譲渡」という文字は馴染まないものの、その契約による収入と従業員給与等の支出とがセットで取引の対象になっているからである。
この対価の額の計算方法は、現在のところ税理士事務所特有のもののようである。しかし、計算方法は当然いろいろあり得るわけで、例えば、事業承継のためのM&Aの場合であれば、「時価純資産額+営業権」とする例が多いと言われている。その場合の「営業権」は、例えば「税引後利益×3年」とか、「(税引前利益-(時価純資産額×期待利子率))×3年」として計算される。後者の算式中の「税引前利益-(時価純資産額×期待利子率)」は「超過収益」といわれるものである。「3年」とあるのはいずれも「営業権持続年数」であり、必ずしも3年でなくともよい。
こういったケースは、単なる顧問先の紹介にとどまるものではなく、いわゆる「事業譲渡」に類似するものと考えられるので、前掲の雑所得説をストレートに当てはめるべきか否かの問題がある。算定の基礎が顧問料の金額になっている点だけをとらえて、単純に全額を雑所得の収入金額とするのか。器具備品やソフトなどの譲渡所得の基因となる資産を抜き出してその部分の時価額を譲渡所得の収入金額とし、残額を雑所得の収入金額とするのか。それとも企業としての資産価値の譲渡による所得として全額を譲渡所得の収入金額とするのか。判断の分かれるところであり、今後の課題であると考える。
3 顧問先引継ぎ料の課税年分
顧問先の紹介料あるいは引継料などの名目で支払を受ける対価による所得の収入金額の計上時期は、原則としてその契約の成立した日となる(所法36①)。
しかし、お尋ねのケースの対価は、一括払いではなく5年間にわたって支払われるとのことであり、契約の時点で金額が確定するのはその当初の年分の400万円だけであって、以降4年分はそれぞれ各年の支払時期にならなければ金額が確定しないとのことである。このような契約内容の場合、それぞれ各年の支払時期において再度当事者間において計数的なチェックと協議が行われて始めて金額が確定するであろうし、仮に新たな税理士(税理士法人)が廃業したときには支払義務は生じないであろうから、収入金額の計上時期としては、それぞれの年の支払金額が確定した段階においてその確定した金額を収入金額に計上することになるものと考える。 (了)
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