発行日:2026年04月
記事① 【令和8年4月施行】賃上げ促進税制、ここが変わった
新年度が始まりました。今年の4月から、賃上げ促進税制が見直されています。「うちは関係あるのか」「何をすればトクになるのか」――今回はそのポイントを整理します。
■ そもそも「賃上げ促進税制」とは
給与を増やした企業が、増加額の一定割合を法人税から直接差し引ける制度です。要件を満たせば、税額が目に見えて減ります。ここ数年で要件・控除率ともに拡充が続いており、見逃すには惜しい制度です。
■ 中小企業の場合(資本金1億円以下等)
賃上げ率 基本控除率
前年比 1.5%以上 15%
前年比 2.5%以上 30%
さらに、以下の要件を満たすと上乗せがあります。
上乗せ要件 上乗せ率
教育訓練費が前年比10%以上増加 +10%
くるみん・えるぼし等の認定取得 +5%
上乗せを最大限活用すると、最大45%の控除が可能です。
■ 押さえておきたい実務のポイント
① 「雇用者給与等支給額」の計算に注意
パート・アルバイトを含む全従業員への給与が対象です。役員報酬は含まれません。
② 比較対象は「前事業年度」
直前期と比べての増加率で判定します。採用増による給与総額増加も対象に含まれます。
③ 控除しきれない場合は翌期に繰り越せる(中小企業)
赤字などで当期に控除できなかった税額控除分は、5年間繰り越すことができます。創業期や投資期の会社にとっても、将来の節税として積み上げておく価値があります。
■ 今からできること
まず確認したいのは、前期と今期の給与総額の見込み比較です。すでに採用を増やしている、ベースアップを実施した――そういった事実があれば、要件を満たしている可能性があります。
詳細は個別の事情によって異なりますので、「うちはどうか?」と気になった方はお気軽にご相談ください。
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記事② 財務チェックリスト(5項目)
4月。新しい期が始まりました。経営者の方にとって、この時期にぜひやっていただきたいことがあります。それは「自社の財務の現在地を確認する」こと。難しい話ではありません。5つの数字を見るだけです。
■ 財務チェックリスト(5項目)
① 現金・預金残高はいくらか
月商の何ヶ月分に相当しますか?目安は最低1ヶ月分、できれば3ヶ月分。ここが薄いと、売上が少し落ちただけで資金繰りが苦しくなります。
② 借入金の残高はいくらか
今期末時点での総借入金残高を確認してください。
③ キャッシュ対借入金比率は何%か (現金預金 ÷ 借入金残高 × 100)
この数字が70%以上であれば、実質的に「無借金に近い状態」と言えます。手元のキャッシュで借入の大半を返せる体力があるということです。
④ 純資産はプラスか
貸借対照表の純資産(自己資本)がマイナスになっていないか確認してください。マイナスの場合は「債務超過」であり、金融機関からの信頼に直接影響します。
⑤ 今期の返済額と利益の見通しは合っているか
年間の借入返済額と、今期見込みの利益(+減価償却)を比べてみてください。返済額が利益を大幅に上回っている場合は、資金繰りの見直しが必要なサインです。
■ チェックの結果、気になることがあったら
「③が低い」「④がマイナスに近い」「⑤のバランスが悪い」――そう感じた場合でも、現状を正確に把握できていることが第一歩です。問題は「知らないまま進む」ことです。数字を見た上で、対策を考えましょう。
会計ソフトから出力された分析表は分かりずらいと思いませんか。工夫します。何かお気づきの点があれば、いつでもご相談ください。一緒に整理します。
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記事③ 「創業赤字」を恐れるな
「先生、赤字なんですが……大丈夫でしょうか」
創業から間もない経営者の方から、こういった相談をよくいただきます。結論から言います。赤字だからといって、すぐに危機ではありません。ただし、「どんな赤字か」を正しく見極めることが大切です。
■ 「創業赤字」は、想定内のコストである
事業を立ち上げる初期は、売上が軌道に乗る前に費用が先行します。人を雇う、設備を整える、販路を開拓する――これらはすべて「将来の売上のための先行投資」です。
この段階の赤字を「創業赤字」と呼びます。計画の範囲内であれば、異常ではありません。むしろ、きちんと投資できている証拠でもあります。
■ 問題は「赤字の中身」
創業赤字で気をつけるべきは、金額そのものより赤字の構造です。
赤字の種類 内容 判断
投資型赤字 先行費用・採用・広告が主因 計画内なら許容範囲
構造型赤字 売上に対して固定費が重すぎる 早期に見直しが必要
売上不足型赤字 想定より売上が大きく下回る 戦略の再検討が必要
■ キャッシュが続く限り、会社は動き続ける
よく誤解されますが、会社が止まる直接の原因は「赤字」ではなく「現金が尽きること」です。
赤字でも手元にキャッシュがあれば、事業は継続できます。逆に、黒字でも入金が遅れて支払いができなければ、会社は止まります。
だからこそ確認したいのは、「今のキャッシュで何ヶ月もつか」という問いです。
目安として、月商の3ヶ月分の現預金があれば、立て直しのための時間を確保できます。
■ 撤退ラインを決めておく「覚悟」も経営者の仕事
投資型赤字を許容しながら走る一方で、もう一つ大切なことがあります。それは「ここまで行ったら立ち止まる」という撤退ラインをあらかじめ決めておくことです。
・純資産がマイナスになる前
・キャッシュが月商1ヶ月分を下回る前
・計画比○ヶ月連続で売上未達の場合
ラインは会社によって異なりますが、「なんとなく続ける」よりも、基準を持って走る方が、経営者も金融機関も判断しやすくなります。
■ 数字は「現状を知るため」にある
赤字を怖がるより、赤字の中身を読む力を持ってください。そしてその数字を、次の意思決定に使ってください。
「覚悟を持って投資している赤字」と「気づかずに膨らんでいる赤字」は、見た目の数字が同じでも、まったく意味が違います。
数字が気になったとき、一緒に読み解きましょう。いつでもご連絡ください。
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記事④ 少額減価償却資産の取得価額基準が40万円未満に引き上げ
令和8年度税制改正により、中小企業者等に認められている「少額減価償却資産の取得価額の損金算入 (必要経費算入)の特例」について、対象資産の取得価額基準が30万円未満から40万円未満へ引き上げられました。所得税についても同様であり、制度の適用期限は3年延長されています。一方で、常時使用する従業員が400人を超える法人は対象外となるため、設備投資の計画に当たっては適用可否の再確認が必要です。
今回の改正の要点
・令和8年4月1日から、取得価額40万円未満の資産まで特例対象が拡大
・所得税についても同様の見直し
・適用期限は令和11年3月31日まで延長
・常時使用する従業員が400人を超える法人は対象外
項目 改正前 改正後
取得価額基準 30万円未満→40万円未満
適用期限 令和8年4月1日ま〜令和11年3月31日まで
対象法人の範囲 中小企業者等のうち400人超の法人を除外
実務上のポイント
今回の改正で最も影響が大きいのは、30万円超40万円未満の資産が新たに特例の射程に入る点です。パソコン、周辺機器、業務用備品、一定のソフトウェア等でこの価格帯に該当するものは少なくなく、取得年度に一括して損金又は必要経費に算入できる余地が広がります。
もっとも、年度(又は年)の即時償却対象額の上限は引き続き300万円であり、取得額の高い資産が増えるほど上限に到達しやすくなります。したがって、単に「40万円未満なら全て一括経費化できる」と捉えるのではなく、年間の取得計画全体を見て、どの資産に本特例を適用するかを整理しておくことが重要です。
また、取得日・事業供用日・資産の単位判定・損金経理(必要経費算入)・申告書類の整備といった、従来からの確認事項も引き続き重要です。
まとめ
今回の見直しは、小口設備投資に対する税務上の柔軟性を高める改正といえます。令和8年度以降に備品、IT機器、ソフトウェア等の取得を予定されている場合は、取得時期、年間投資額、他制度との関係を含め、事前に処理方針を確認しておくことが有効です。具体的な適用可否の判定が必要な場合は、当事務所までご相談ください。
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