2026年6月の税務
6月10日
●5月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額・納期の特例を受けている者の住民税の特別徴収税額(前年12月〜当年5月分)の納付
6月15日
●所得税の予定納税額の通知
6月30日
●4月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●10月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、7月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の3月、4月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(2月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●国外財産調書・財産債務調書の提出
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第1期分)(6月、8月、10月及び1月中(均等割のみを課する場合にあっては6月中)において市町村の条例で定める日)
海外勤務中の株式譲渡(日本で課税の場合・課税されない場合)
◆海外勤務者は非居住者
外務省の令和6年(2024年)10月1日現在の海外在留邦人数調査統計によると長期滞在者(海外勤務者)は71万2,713人です。
給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。非居住者の場合、日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみとされています。
◆海外勤務中に株式を譲渡した場合
給与所得者が海外勤務中であれば、一般的には恒久的施設を有しない非居住者に該当します。恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の1から6のいずれかに該当する所得が申告対象の国内源泉所得として課税対象となります。
1.買集めによる株式等の譲渡による所得
2.事業譲渡類似株式等の譲渡による所得
3.税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡の所得
4.不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得
5.日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得
6.日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得
1と2と4は特殊なケースと考えられますが、3と5と6は実際に身近に起こりそうな譲渡ではないでしょうか。
1から5に該当するものについては、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分し、他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税となり、6に該当するものについては総合課税の対象となります。これらに該当する場合は確定申告が必要です。
◆租税条約により日本では課税されない場合
租税条約は関連国内法規に優先してその効力を有すると理解されています。そのため、海外勤務者が居住する国と日本国との間に租税条約(協定)があれば、それに従うことになります。
たとえば、香港居住者の普通の株式譲渡(不動産関連や事業譲渡類似を除く)は、日・香租税協定により日本国内では課税されません。シンガポールの場合も然りです。
一方、租税条約が結ばれていなかったり、モナコなどのように執行共助条約のみしか結ばれていなかったりの場合は、所得税法の原則通り日本で課税されます。
-相続空き家の特例-建物解体費の譲渡費用該当性
土地や建物を売却した場合、譲渡所得金額の計算上、譲渡費用は取得費とあわせて資産の譲渡収入金額から控除できます。
◆「直接的必要性」と「客観的必要性」
譲渡費用は、「資産の譲渡に要した費用」とされます。国税庁タックスアンサーでは、譲渡費用を「土地や建物を売るために直接かかった費用」とし、直接的必要性が強調されています。
一方、所得税基本通達では、譲渡費用の例示として「土地(借地権を含む)を譲渡するため、その土地の上にある建物等の取壊しに要した費用」としており、直接的必要性は記載していません。これは、平成18年最高裁判決を契機に発遣された譲渡費用の範囲についての個別通達、土地改良区内の農地を転用目的で譲渡した際、土地改良区に支払われた農地転用決済金等を譲渡費用とする措置を受けたものと思われます。
この裁判では、譲渡費用を従来の「直接的必要性」要件にとらわれず、「現実に行われた資産の譲渡を前提として客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかにより判断すべきもの」とし、新たに「客観的必要性」要件が判断基準として示されました。この「客観的必要性」の要件は、それぞれの譲渡における個別事情に照らして客観的に判断されることになります。
◆相続空き家の特例での譲渡費用該当性
相続空き家の特例で建物を耐震改修又は取り壊す目的は、耐震基準を満たしていない被相続人の空き家の発生を抑制する国の政策実現にあります。空き家を取り壊す場合は、更地で売却するか、あるいは建物と土地を先に売却したうえで、売却した年の翌年2月15日までに建物を取り壊すことが税法上、必要となりますので、解体工事費には土地売却のための客観的必要性があるものと思われます。
また、特例の適用には相続開始時から取壊し又は売却までの間、建物、土地を賃貸用、事業用、居住用に供しないこと、建物解体後は土地の売却まで建物や構築物の敷地の用に供しないことなど利用制限が課されますので解体工事費の直接的必要性は高まります。さらに、特例の適用期限は相続開始から3年経過する日の属する年の12月31日までですが、建物解体工事の後、媒介契約、売買契約、引渡しに至るまでの期間を速やかに進行させることにより、直接的必要性は説明しやすくなるものと思われます。
相続税調査は増加傾向 追徴課税額も過去最高水準に
◆実地調査は9,500件超に増加
令和6事務年度の相続税に関する実地調査件数は9,512件で、前年度比111.2%と大幅に増加しました。追徴税額も824億円(前年度比112.2%)と増加し、調査1件あたりの追徴額は平均867万円に達しています。調査の対象は、過少申告が疑われる事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告が疑われる事案など、国税当局が入手した資料情報に基づき重点的に選定されています。
◆簡易な接触でも追徴効果
書面通知や電話・来署依頼による「簡易な接触」も積極的に行われており、21,969件(前年度比117.0%)に達しました。これにより、申告漏れ課税価格は1,123億円、追徴税額は138億円と、いずれも簡易接触が開始された平成28年度以降で最高水準となっています。形式的なやり取りで済むと軽視されがちですが、実態は大きな修正リスクを伴っており、税務署からの文書ひとつが大きな対応義務に発展する可能性があることを認識すべきです。
◆無申告・海外資産は特に要注意
無申告事案の追徴税額は142億円と、平成21年度の公表開始以来で過去最高を記録しました。また、海外資産関連事案も増加しており、実地調査件数は1,359件、申告漏れ課税価格は97億円でいずれも前年比2割以上の増加です。特に、CRS情報や租税条約による情報交換が活用されており、海外資産の秘匿は極めて困難になっています。
実例として、海外子会社への貸付金を国内法人口座経由で隠蔽したケースでは、約4.4億円の課税価格の修正が行われ、1.8億円の追徴税額が発生しました。意図的な隠蔽行為は重加算税の対象にもなり得るため、非常に高額な税負担リスクを伴います。
◆実務での対応ポイント
これらの状況を踏まえ、相続税対策を行う中小企業経営者や資産家は、次の点に留意すべきです。まず、相続前の多額の現金引き出しや贈与については、目的・使途の記録と説明責任を明確にすること。また、海外資産を保有している場合は、その管理状況や取得経緯を文書化しておくことが肝要です。税理士任せにせず、資産構成と過去の資金移動について経営者自身が説明可能な体制を整えておくことが、将来的な税務リスクを軽減する鍵となります。