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【時事解説】コストを下げるか、販売価格を引き上げるか その2



 企業は単純にコスト引き下げに走るか、コストをかけても付加価値をつけ、販売価格引き上げに挑むかの選択を迫られることになります。それが象徴的に表れるのが人件費です。コストを引き下げるなら、人件費は削減しなければなりませんが、付加価値を生むアイデアは人から生まれますから、高付加価値を志向するなら、人件費削減は逆効果です。

 利益を出すために、多くの企業は人件費を削減し、コスト引き下げを選択するでしょう。というのは、コストの削減は主として企業努力で実現し、効果が確実に見えるからです。これに対し、製品の付加価値増を期待し人件費を増やしたとしても、本当に販売価格を引き上げるほどの付加価値を実現できるかどうかは、市場の受け入れ方次第で不確定です。また、利益が落ちている中でのコスト増加になりますから、失敗した時の責任も免れません。

 そういうことを考えると、人件費を削減しコスト圧縮を志向するのは個別企業の経営判断としては合理的な選択だといえます。しかし、すべての企業がその合理的な選択をすると、国全体の従業員の賃金が下がり、購買力が落ち、経済は縮小均衡に陥ります。それがバブル崩壊以後の日本経済衰退の要因の一つではなかったのではないかと私は思っています。

 我が国の国民性の特色の一つに、同調圧力の強さがあるといわれています。強い協調性は、経済が上り調子の時は、経済成長に拍車をかけますが、経済が下り坂になると、皆が一斉に同じ行動をとりますから、下り坂にブレーキをかける力が働かなくなります。下り坂を反転させるには、大多数とは違うことをしようとする異分子の力が不可欠です。

 簡単なことではないのですが、製品に付加価値を付け、新市場開拓に挑戦する勇気も企業家に求められる重要な素養であることを忘れてはならないと思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
2024年1月11日更新
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武井 一男 税理士事務所