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固定資産税相当額の清算金について

不動産の売買に際して、買主から売主に対して交付される固定資産税相当額の清算金は当該不動産の取得費に該当し、 不動産所得の必要経費にはならないとされた事例


*主たる争点*
 本件は、共同住宅等の貸付けを業とする原告が、不動産所得の金額の計算上、[1]貸付業務用の土地建物を購入する際に支払った仲介手数料(以下「本件仲介手数料」)の全額、[2]土地建物を購入した年の固定資産税等の税額のうち未経過分に相当する金額で購入の際に原告が支払うことを合意した清算金(以下「本件清算金」)の全額を必要経費に算入して所得税の申告をしたところ、税務署長から、本件仲介手数料及び本件清算金の額は貸付業務用の不動産の取得価額に含まれ、建物の取得価額に係る減価償却費となる金額のみが不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるとして、所得税の更正処分等を受けたことから、これらの取消しを求めた事案である。主な争点は、[1]本件仲介手数料及び[2]本件清算金の全額をそれが生じた年分の不動産所得の必要経費に算入することができるか、にあった。

*判決の要旨*
 請求棄却。
 ([1]について)所得税法施行令126条1項1号は、購入した減価償却資産の取得価額は、当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(中略)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)及び当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定する。そして、本件仲介手数料は、同号の「購入手数料」に該当することが明らかである。そうすると、上記の法令の定めによれば、本件仲介手数料のうち建物に係る部分は、本件建物に関する取得価額に算入され、その取得価額に基づいて算定される減価償却費の額が、その後、各年分の不動産所得の必要経費に算入されることになる。
 一方、非減価償却資産である土地自体の購入の代価は、それが将来譲渡された際、所得税法38条1項が定める「資産の取得に要した金額」に含まれ、譲渡所得の金額の計算上「取得費」として控除され、土地を購入した際に支払った仲介手数料もまた、同項が定める「資産の取得に要した金額」に含まれるものとして、譲渡所得の取得費として取り扱われる。そうすると、土地の購入の際に支出した仲介手数料は、直接的には資産の取得に伴って生じた支出であり、当該資産が不動産所得を生ずべき業務の用に供されるか否かとは関係なく支
出されるものであって、土地を将来譲渡した際、その全額が、譲渡所得の取得費として取り扱われるべきものであることからすると、所得税法37条1項にいう「所得を生ずべき業務について生じた費用」には該当せず、不動産所得の必要経費に算入されない。
 ([2]について)固定資産税の賦課期日とは異なる日をもって固定資産の売買契約を締結するに際し、買主が売主に対し、売主が納税義務を負担することになる固定資産税等の税額のうち売買契約による所有権移転後の期間の部分に相当する金額を支払うことを合意した場合、この合意に基づく金額の支払は、固定資産税等に係る買主の納税義務に基づくものではない。そして、この合意は、固定資産の売買契約を締結するに際し、売主が1年を単位として納税義務を負う固定資産税等につき買主がこれを負担することなく当該固定資産を購入するという期間があるという状況を調整するために個々的に行われるものであることからすると、この合意に基づく金額は、実質的には、当該固定資産の購入の代価の一部を成すものと解される。以上によれば、本件清算金のうち、建物に係る固定資産税等の未経過分に相当する金額の清算金の額は、実質的には資産の購入の代価の金額の一部であると解され、所得税法施行令126条1項1号の購入の代価に該当することになるから、これを建物の取得価額に算入し、当該取得価額に係る減価償却費の額のみを不動産所得の必要経費に算入すべきこととなる。
 また、本件清算金のうち、土地に係る固定資産税等の未経過分に相当する金額の清算金も、実質的には資産の購入の代価の金額の一部であると解されるから、所得税法37条1項にいう「所得を生ずべき業務について生じた費用」には該当せず、不動産所得の計算上必要経費に算入することはできない。

*コメント*
 不動産の取引においては、本件のような金員の受渡しが通常行われる。固定資産税の賦課期日後に所有者に異動が生じたからといって、課税関係に変動が生じるものではなく、同日後に所有主になった者が地方税法上の納税義務を負うことはない。未経過分の固定資産税等相当額の清算金の課税関係の処理について判断した事例として、実務上の参考になることから紹介する。

東京地裁平成25年10月22日判決
 
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