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事務所だより~役員報酬に自社株式を用いる場合~ No.6

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なお、内容につきましては、諸条件により本資料の内容とは異なる取扱いがされる場合がありますので、ご留意ください。

役員報酬に自社株式を用いる場合

(1)はじめに
 近時、上場会社における役員等の経営者に対する報酬に自社株式を利用する動きが強まってきました。インセンティブ報酬の導入の背景には、コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)などがあると言われています。今回は、代表的なインセンティブ報酬について説明します。

(2)株式交付型インセンティブ報酬の概要
 自社株式を用いたインセンティブ報酬の代表的なものは、ストック・オプション(新株予約権)、特定譲渡制限付株式(事前交付型)、リストリクテッド・ストック・ユニット(事後交付型RSU)、パフォーマンス・シェア(事後交付型PS)、株式給付信託(受益者等課税信託)になります。近年、我が国においても、法人がその役員に中長期的なインセンティブ効果及びリテンション効果を持たせること等を目的として、株式報酬を支給する事例が増加しつつあります。株価上昇が見込まれる企業において用いられるストック・オプション、役員に対するリテンション効果を期待して用いられる譲渡制限付株式、業績目標の設定と組み合わせて株価の騰落による利益及び不利益を反映できるパフォーマンス・シェア等がそれぞれの性質に応じて用いられます。いずれも交付時より株価が上昇している場合には、上昇分を経済的利益として享受することができます。

(3)インセンティブ報酬の課税上の取扱い
 役員給与の損金算入規定について、平成29年度税制改正において、大幅な見直しが行われました。これまでは、経済的効果が同様である給与等であっても支給形態が異なる場合には税制上異なる取扱いとなるなど、役員給与等の実態と税制上の損金算入要件との乖離や役員給与等の類型間での不整合が生じていました。そこで、平成29年度税制改正において、従前どおり適正な手続き等を経ていることとの要件を維持した上で、役員給与等について全体的に整合的な制度となるように所要の整備が行われました。なお、代表的な株式交付型インセンティブ報酬の課税上の取扱いは以下の通りです。

 Ⅰ.交付資産が株式
  ①特定譲渡制限付株式(事前交付)
   (ⅰ)付与会社の損金算入要件:事前確定届出給与
   (ⅱ)被付与者の所得区分:給与課税
  ②リストリクテッド・ストック・ユニット
   (ⅰ)付与会社の損金算入要件:事前確定届出給与
   (ⅱ)被付与者の所得区分:給与課税
  ③パフォーマンス・シェア
   (ⅰ)付与会社の損金算入要件:業績連動給与
   (ⅱ)被付与者の所得区分: 給与課税
  ④株式給付信託
   (ⅰ)付与会社の損金算入要件:事前確定届出給与、業績連動給与
   (ⅱ)被付与者の所得区分:給与課税

(注1)リストリクテッド・ストック・ユニット、パフォーマンス・シェア及び株式給付信託は、従前は退職給与に該当する場合を除いて、損金不算入でしたが、平成29年度税制改正後、損金算入が可能となりました。
(注2)税制非適格ストック・オプションについては、従前はその行使時に原則として全額損金算入が可能でしたが、平成29年度税制改正後は、①事前確定届出給与又は②業績連動給与として損金算入要件を満たすことが必要となりました。(注3)特定譲渡制限付株式については、平成30年度税制改正により、平成30年4月1日以降、一定の要件の下、特定口座への受入れが可能となります。ただし、同一の金融機関内の振替に限ります。


 Ⅱ.交付資産が新株予約権
  ①税制非適格
   (ⅰ)付与会社の損金算入要件:事前確定届出給与、業績連動給与
   (ⅱ)被付与者の所得区分:給与課税
  ②税制適格
   (ⅰ)付与会社の損金算入要件:損金不算入
   (ⅱ)被付与者の所得区分:譲渡所得課税

(4)むすびに
 我が国の上場企業は、諸外国と比べて、役員報酬に占める固定報酬の割合が高く、業績連動報酬の割合が低い傾向にあります。我が国の企業は、AI時代などの到来を迎え、これまでの産業構造に大きな転換が求められる環境の中にいます。会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の観点から、各企業の状況に応じて、現金報酬と株式報酬について、適切な組み合わせの経営陣報酬改革が必要になると考えられます。
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