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【時事解説】企業の評価を左右する人的資本経営とは その2



 2023年3月期の有価証券報告から「人的資本」に関する開示が義務付けられました。ただ、現在、開示の内容に関する基準やひな形は決まっていません。企業が開示する事項を主体的に選んでいるのが現状です。ISO30414では、「人的資本に関する情報開示のガイドライン」が定められ、参考にする企業もあります。

 また、金融庁からは有価証券報告書の開示例が公開されています。とある制御機器メーカーでは人権リスク分析を実施し、各拠点で評価を行い、課題がある拠点は対策を検討、是正措置を実施しました。これにより、グループで働くすべての人たちの人権が尊重され、よりよい職場環境を実現できたことが報告されています。

 こうした人的資本経営が重視される背景には企業の存在理由や目的が変化していることが一つとしてあります。1990年代まで、世界の上場企業は株主の利益に焦点を当てる傾向が強くありました。

 かつて、株式会社は投資家からお金を集めて大規模な工場を建て、大量生産を通じて利益を生み出していました。工場を建てるためのお金は貴重で、お金を提供してくれる株主に重きが置かれるようになりました。

 ところが、時代は流れ、大量生産により世の中には多くの商品があふれ、消費者はありきたりの商品には魅力を感じなくなります。売れる商品をつくるには他社との違いを生み出すイノベーションの必要性が高まります。結果、イノベーションを生み出せる創造的な人材が貴重な存在になったのです。実際、米国ではS&P500企業の時価総額のうち90%が無形資産と推定されています。企業は工場や設備などの有形資産を持たなくても、魅力的なソフトウエアなどを開発できる人材がいれば、競争力をつけることができるようになったのです。今後さらに、企業の価値を高めるため、人的資本の重要性がますます高まっていくと考えられます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
2023年12月1日更新
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