さらに最近の消費形態の大きな変化に、ヤフオクなどのネットオークションやホテル代わりに個人の住宅の一室を貸すエアビーアンドビーなども挙げられます。オークションは自分が使わなくなった品物を他人に売却するものですし、エアビーアンドビーは空いている部屋を旅行者などに貸すものです。どちらも個人が最終ユーザーに直接販売するのが大きな特徴です。
これまでは消費者である個人が片手間に事業を行うハードルはとても高いものでした。売りたいモノ、貸したいモノが手元にあっても、個人が所有するわずかのものを幅広く世の中に営業展開する方法を持たなかったからです。しかし、ネットの普及は個人の営業展開コストを劇的に引き下げました。従来であれば、消費者は事業を行う専門の事業者から高い新品を買うしかなかったのですが、消費者同士の安い中古品の直接取引がネットを媒介して可能になったのです。事業者を通せば、経済成長の統計に表れますが、零細個人の事業収益は経済成長にカウントされません。
このように、利用目的の明確化によるモノの共同消費やネットの普及による中古品市場の拡大は、経済統計に表現される経済成長を抑制します。しかし、経済成長率は鈍化しても、住むための住居、移動するための車、着るための衣服、泊まるための部屋といった消費者の効用は決して減少していません。
経済をGDP(国内総生産)の成長率で測る時代は過ぎ去ったと考えるべきなのかもしれません。(了)
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)