ただ、例外もあります。国にはそれぞれの事情に即した経済的目標があるからです。将来的に大きく育てたい産業がある場合は、その産業の製品に高い関税をかけて輸入を制限し、自国の産業を保護するということはあるでしょう。また、それ以外の特別の理由、たとえば、安全保障上、食糧自給率を維持したいとのことで特定の農産物に高い関税をかけ、国内農業を守るということもありえます。
自動車産業を育成するという目的で自動車に高い関税をかけ、その結果、自動車産業が成長し、将来的に安く性能がいい国産自動車が消費者に行き渡るということになれば、その当時の自動車に対する高関税は是認されます。しかし、高関税をかけても一向に国内自動車産業が成長しないのであれば、国民はいつまでたっても高い外車を購入し続けなければならず、関税を高くした意味がありません。また、コメに対する高関税は、安全保障政策上どんなに高い価格であっても、最低限主食のコメだけは外国産より高くても国産で賄わなければならないという国民的コンセンサスの下で正当化されます。もしコメも安い方がいいというのが国民の総意であれば、コメの関税は引き下げることが求められます。
関税をかけると、関税分だけ価格が高くなり、輸出量が減り、輸出国側が打撃を受けます。ただ、話はそれだけには終わりません。輸入する側も価格が高くなり、物価高になり一般消費者の負担になるからです。
トランプ政権の関税政策には上記のような説得力のある理由に乏しく、ただ貿易赤字が気に食わないとか、トランプ大統領が得意とするディール取引の材料にするためとか、場合によっては単にその国が嫌いだからとかというだけの理由であるように見受けられます。そのために物価が上昇し、生活が困窮することにアメリカ国民が納得できるかどうかが問われることになります。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)