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【時事解説】Win-LoseかWin-Winか



 トランプ政権発足後、2年近くが経とうとしています。そこで、政権の経済政策の柱である関税政策を中心に、これまでのトランプ政権の方向性を総括してみます。

 トランプ政権の経済政策の特色は「ディール(取引)」にあるとされます。ディールでは明確な勝ち負けが生じます。当初50:50から出発して、ディールを行い、60:40になれば60取った方が勝ち、40の方が負けになります。トランプ氏の場合、当初は90というような高めの球を投げ、60とか70というところで手を打つというのが常套手段のようです。こうした取引をすれば、ほとんどの場合、力の強いものが勝つことになります。アメリカは衰えたとはいえ、経済的にも軍事的にも世界最強の国家です。アメリカ大統領がこうしたスタンスで2国間交渉に臨むとすれば、相手方は何とか穏便に済ませてもらえるように貢ぎ物を差し出し、媚びへつらい、お願いするしかなくなります。

 ただ、このディールにおいて見過ごされていることがあります。それは2国が対決するのではなく、協調することにより、2国の経済的利益の総和が増えることがあるということです。関税政策においては、相互に関税をかけあうのではなく、ともに関税を引き下げ、「比較優位の原則」に基づき、お互いが得意なものを生産し、貿易を拡大すれば、2国間の経済的利益の総和は100から120に達することもあるのです。経済的総和が100で変わらないとすれば、ディールの結果、片方が多く取れば片方が減るから、勝者と敗者が存在します(Win-Loseの関係)。しかし、経済的利益の総和が120に拡大するのであれば、それぞれが60ずつ分け合うことにより両者とも満足できます(Win-Winの関係)。

 トランプ政権の経済政策には協調して行動することにより経済的利益の総和を増加させるという発想が決定的に欠けています。一方が関税をかければ、他方はそれを黙って見過ごすことはできません。多くの場合、報復関税に発展します。報復関税をかければ、経済的総和は100から90になってしまう可能性すら存在します。そうなってしまえば、たとえディールで勝っても取り分は減ってしまうかもしれません。
 このようにWin-Winの関係に持ち込めば、両者ともに分け前が増えるにもかかわらず、トランプ政権の経済政策にはWin-Loseの関係における勝者になることに執着する余り、Win-Winの関係を築くことに対する配慮が欠けているように思えてなりません。

 これまでドルを基軸通貨とするブレトンウッズ体制に基づく自由貿易の拡大と経済のグローバル化、そしてそれに伴う国際協調の進展は当然のものとし、それを前提に政府も企業も政策を進めてきました。それは単に世界の大勢だからということだけではなく、経済理論的、倫理的にも正しいから、この潮流は不可逆的なものだと安心していたのです。ところが、その体制の創設者であり、牽引者でもあった世界最強国のアメリカの大統領がそれに公然と異を唱え、「自国ファースト」を掲げ、国際協調から弱肉強食の世界へ戻ることを宣言したのです。その衝撃はとてつもなく大きいように思います。トランプ政権が進める外交政策のドラスティックな変更も併せて考えると、世界は今、歴史の転換点に立っているのかもしれないという思いを強くします。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
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