2025年9月の税務
9月10日
●8月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
9月30日
●7月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●1月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、4月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の6月、7月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(5月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
夫婦で共有する居住用マンションの譲渡所得
マンション市場は海外からの投資を呼び込み、空前の価格高騰を引き起こしています。不動産経済研究所の公表する2025年2月分の不動産価格指数は、211.8(2010年平均=100)、この15年で2倍以上となり、この機会に自宅を売却する人もいます。
◆譲渡所得に課税
不動産の保有期間中のキャピタルゲインは売却によって実現し、その収入金額は担税力を生むので、譲渡所得に課税されます。
譲渡所得は、売却による収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて算出します。取得費はマンション取得時の購入価額、印紙代、購入手数料、登記費用など。譲渡費用は売却時の仲介手数料、印紙代などです。
◆居住用は譲渡所得から3,000万円を控除
居住用不動産を売却すると新たに居住用不動産を購入する資金が必要となり、売却によって得た担税力が減殺されてしまいます。そこで居住用不動産の譲渡所得から3,000万円を控除する制度があります。
この制度は夫婦で共有するマンションを売却する場合にも、一定の要件を満たせば適用され、それぞれの所有持分に応じて譲渡所得から共有者一人につき3,000万円まで控除が行われ、税額を圧縮できます。
◆3,000万円特別控除の主な要件
3,000万円特別控除は、現に自分が住んでいる家屋の譲渡、家屋とその家屋の敷地の用に供されている土地等の譲渡、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までの家屋・土地等の譲渡などに適用されます。
また、譲渡した年の前年、前々年に、既にこの3,000万円控除の特例等を受けている場合は、この特例は適用されません。
住宅ローン控除は入居した年、その前年、前々年に3,000万円控除の特例を受けた場合には適用されません。なお、住宅ローン控除を受けた物件を譲渡した場合、その物件に3,000万円控除の特例は適用されます。その他の要件は国税庁のタックスアンサー等で確認できます。
◆所有期間10年超は、更に軽減税率を適用
売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用不動産で国内にあるものを売却する場合、3,000万円の特別控除額を差し引いた後の長期譲渡所得に軽減税率が適用されます。長期譲渡所得金額6,000万円以下の場合、所得税率10%(通常15%)、住民税率4%(通常5%)が適用され、負担が更に軽減されます。
のれんの償却をめぐる議論の背景
◆スタートアップ企業の費用負担が課題
スタートアップ企業がM&A(合併・買収)によって自社の成長に必要な会社を取得する場合、取得価額が相手の純資産価額を上回る部分に会計上、のれんを計上します。
のれんは資産に計上し、20年以内の期間を定めて毎期、定額法等による規則的な償却が求められます。しかし、償却費の負担は販売費・一般管理費となってスタートアップ企業の営業利益を圧迫するので、のれんに償却を要しない外国の企業に比べ、収益力や財務体質が見劣りされてしまうことが問題とされていました。
一方で政府はスタートアップ企業を2027年までに10兆円規模にし、将来、ユニコーン(時価総額1,000億円超の未上場企業)を100社創出すること等を目標に掲げています。令和7年5月、政府の規制改革推進会議は、のれんの会計処理の見直しを検討するよう内閣総理大臣に答申しました。
◆国際会計基準は減損リスクに向き合う
国際会計基準IFRSは、取得したのれんに償却を求めません。スタートアップ企業は海外企業と同じ条件で競争できますが、その代わりに、のれんの価値を適正に評価し、毎事業年度、減損が生じていないかテストして、減価の発生が判明した場合は、のれんの簿価を切り下げる減損処理が求められます。経済環境が急激に悪化したときは、大きな減損損失を計上するリスクを負担することになります。
◆日本の会計基準は規則的償却
これに対し、日本の会計基準は伝統的に減価償却を重んじてきました。M&Aで取得した会社の投資効果は時間の経過とともに減少し、のれんの価値は徐々になくなり、代わってM&Aによって新たに生み出された価値(自己創設のれん)に置き換わるものと考えられています。
のれんを償却する場合は、自己創設のれんの計上を回避できること、のれんの効果が及ぶ期間や減価のパターンを合理的に測定する困難さがなくなること、規則的償却により、M&Aの投資コストを毎期の損益に期間配分して収益と対応させることなどが重視され、日本ではこれまでのれんについて国際会計基準の適用を見送ってきました。
◆独立性を保持したうえで基準を見直せるか
規制改革推進会議の答申を受けて、企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業会計ルールの主体者として独立性を保持しつつ、国際会計基準との調整力が問われています。