人手不足による倒産が懸念されています。最近の失業率は2%台後半と低位にあります。ホテル、飲食業などのサービス業では需要はあっても、従業員不足からサービスが提供できず、需要に応えられないという状況もあるようです。そうした状態を受けて、大手企業を中心に賃上げが相次いでいます。賃上げできる余力があればいいのですが、その力がなければ、従業員を確保できず、営業が立ちゆかなくなるという事態も想定されます。
「倒産」と聞くと、すべからく避けなければならないという印象を持ちがちですが、経済全体を俯瞰して見れば、産業の新陳代謝のために、ある程度は受け入れざるをえないものです。その観点からすれば、倒産を避けることばかりに集中するのではなく、一定程度の倒産は不可避だということを基本認識に、政府や企業も、そして労働者個人も対応する必要があると思います。
経済全体のパイが拡大しているときは、古い産業を温存しながら、新しい産業を取り込むことも可能です。しかし、現在は人口減少等に制約され、経済の拡大は難しい状況にあります。こうした状況下で、経済に新産業を取り入れるためには、新陳代謝が必要になります。
ヒト、モノ、カネ等の資源は有限であり、すべての企業の要望に応じることはできません。これまでは倒産といえば、資源の中で主としてカネを中心に論じていたのですが、これからは、労働力不足の深刻化で、ヒトに焦点が当たるようになるでしょう。生産性の低い企業に希少な労働力を貼り付けることは経済全体として非効率です。したがって、生産性の低い企業は労働力を調達できなくなり、市場からの退出を迫られることになります。(つづく)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)