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【時事解説】平時の無駄か、非常時の備えか その2



 一方、平時では自己資本比率が高く、キャッシュリッチな会社は、特に株主からの還元要請が強い上場会社においては、無駄な資金を眠らせている会社として批判の対象になります。資金に余裕があるなら、会社の成長に向けてもっと積極的に投資することを要求されます。成長に振り向けられない余剰な資金は、原理的には会社は株主のものですから、配当なり、自社株買いなりで株主に還元すべきだということになります。

 つまるところ、こうした非常時に備える経営の余裕を平時にどのように考えるかが問われます。「無駄」だととらえれば、スリム化しなければなりませんし、「備え」だととらえれば、温存することになります。

 近年は、感染症に限らず、大震災や地球温暖化の影響による風水害など、非常時が多くなってきている印象を受けます。そうすると、キャッシュを使って会社を成長させようとするより、非常時に備えるため、自己資本を蓄え、キャッシュリッチな会社を目指そうとする経営者が多くなるかもしれません。経済・社会環境からすれば、それもやむを得ないことのように思えますが、経済の牽引役であるべき企業家の志向が余りに内向きになるのは、経済全体にとっては好ましいこととは言えません。経営の余裕を非常時の備えだと簡単に割り切ると、キャッシュの使用に関して思考停止状態に陥ってしまうことも懸念されます。それは出資する個人のリスクを限定して、より挑戦的に企業活動をしてもらおうとする株式会社精神の本義に反します。

 日本は人口減少時代を迎え、ただでさえ経済成長が難しい時代になってきています。それに加えて、企業家精神までも衰えてしまえば、経済の停滞は避けることができません。今回のパンデミックの影響が強烈だっただけに、経済が本来持つべきダイナミズムを長期にわたってそいでしまうことを危惧します。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
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