毎年六月に郵送される固定資産税課税明細書にて、所有する不動産の課税標準額と固定資産税相当額を確認するが、大抵納税通知書の金額を信頼して納税を終わらせる。税額が過大であるとか、過大分を還付してもらうべきところ、訴訟では還付金に相殺が入って返還される可能性があると予想するだろうか。過大税額分を返還するための法的手段を確認したうえで、相殺が入る場合について検討する。
まず、地方団体の長は、過誤納に係る地方団体の徴収金があるときは、政令で定めるところにより、遅滞なく還付しなければならない(地方税法17条)。そして、地方税の課税標準若しくは税額を減少させる更正処分は法定納期限の翌日から起算して五年を経過する日までとしている(地方税法17条の5第2項)。5年を経過すると、更正処分はできず還付もできない。さらに還付金債権はその請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する(地方税法18条3項)。
地方税の不服申立は、行政不服審査法に定めるところにより行われる(地方税法19条)が、比較的短期間に大量の課税処分を可及的速やかに確定させ、徴税行政の安定と円滑な運営を確保する趣旨から、価格に関する不服は固定資産評価審査委員会で審査決定をし、価格以外の不服は市町村長に異議申立てをする。
固定資産評価審査委員会に審査申出ができるのは、台帳登録の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3月を経過する日までの間(地方税法432条①)である。その後は、固定資産評価審査委員会の決定若しくは市町村長の決定以後6か月以内(地方税法19条、行政事件訴訟法14条)に訴訟で争わなければならない。この期間を逃し時効により消滅すると、納税者は過大分の返還ができなくなる可能性がある。
この点について、国家賠償請求を認めると、課税処分を取り消すことなく還付金を請求することになるため、課税処分の公定力を否定することとなる。しかし、当該行政処分の取消し又は無効判決を得るものでもなく、金銭納付を直接の目的としており、その違法を理由として国家賠償請求を認容すれば、当該行政処分の取消と同様の経済的効果が得られることと異ならない(平成22年6月3日最高裁第一小法廷判決)。
したがって、国家賠償請求を行うことを否定する根拠規定はないものの、税額が返還されるのではなく同様の経済的効果が得られることにより、国家賠償請求による納税者の救済が法的手段として認められる。
次に、国家賠償法で納税者の救済する場合、過大税額分を還付すべきところ、過失相殺について検討する。
まず、国家賠償法1条1項に基づく賠償請求は、公権力の行使に含まれる行為に違法性が認められなければならない。違法性の有無は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしたか否かによって判断すべきと解するところ、公務員が固定資産課税台帳に固定資産の価格を登録するとき、漫然と評価をし又は価格決定をしたと認め得る事情がある場合に違法性が認められる(東京高判平成29年12月25日判決)。
固定資産税の還付が生じる具体的事例として、評価自体の間違い(最高裁平成22年6月3日判決)、住宅用地特例の不適用(大阪高判平成18年3月24日)等があげられる。
前述の冷凍倉庫事件の場合、納税者側が倉庫の経年減点補正率を利用しているのではないかと区役所側に伝えたことから納税者側の過失は認められていない。しかし、住宅用地特例の不適用は、納税者に有利となる特例であるにもかかわらず、自ら申告書を提出していなかった場合、過失相殺を認めている(東京地裁平成28年1月27日判決は三割の過失相殺と弁護士費用の支払い、東京地裁平成28年10月26日判決は2割過失相殺、東京地裁平成27年10月26日判決は1割過失相殺)。
賦課課税制度は、課税庁が把握しやすい固定資産に対し納税の申告手続の手間を省き、行政側が効率的に徴収事務を進めることで課税公平主義を実現するためにある。
公権力の行使であるものの、課税庁は納税者に固定資産税課税明細書を送付することで、固定資産評価額及び課税標準額の通知をして、納税に関する事前の情報提供をしている。その通知を納税者が自主的に確認することを怠ると過失として認められる。
したがって、適正な納税を目指すためには、納税者が意識を持って自分自身の課税標準額と納税額の確認をしていくことが必要である。 以上
令和7年12月17日
税理士 原田潤子