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時効取得と一時所得

 不動産は、民法176条で当事者の意思表示のみで所有権が移転することを規定している。所有権の移転を第三者へ主張するために登記があり、物権変動の対抗要件として登記(民法177条)を必要とする。

 しかし、他人の宅地を自分の宅地と信じて住み続けた場合、時効取得により所有権を取得することができる(民法162条)。20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有する場合と、占有開始時に善意かつ無過失で10年間所有の意思をもって占有した場合に、時効取得により所有権を取得する。

 時効取得制度の趣旨は、永続した事実状態の尊重のみならず、当事者の意思を尊重することにあるから、権利の消滅により直接利益を受ける者を「正当な利益を有する者」(民法145条括弧書)として、限定的に解さなければならない。

 正当な利益を有する者として、時効取得した者は、時効取得された元所有者と物件変動の当事者類似の関係であるから、元所有者に対して登記なくして時効取得を主張できる 。
 上記要件を満たしたとしても、自動的に所有権を取得できるわけではなく、時効を援用する必要がある(民法145条)。具体的には、相手方に書面を送付したり、簡易裁判所に所有権移転登記手続請求訴訟を起こす必要がある。

 この場合、時効取得した者は、税務上どのように所得税申告書に計上すべきかという問題が生じる。
 この点について、所得税は包括的所得概念の考え方の影響のもとに 課税対象を非営利目的かつ非継続的行為から生じた所得であって、かつ対価としての性質を有しないものを一時所得(所得税法34条)として定めている。時効取得による利得は、対価性がなく一時的な所得であるから、一時所得に該当する。
 また、いつ一時所得として申告書に計上すべきかという問題であるが、この点について、所得税は期間税であり、収入金額及び必要経費は年度帰属が重要となる。収入金額の年度帰属の考え方が権利確定主義であり、その年において収入すべき権利の確定した金額が収入金額となる。
 時効による権利の得喪の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生じるのではなく、時効の援用がされたときに初めて確定的に生じるものと解されるため、時効の援用がされた時に、初めて確定的に時効利益を享受する意思が明らかとなり、一時所得による収入金額が明らかとなる。その計上時期は、時効援用することにより権利確定時期とされるわけであるから、簡易裁判所に調停申立書を提出し申立てを行ったときに確定しているものと解され、その年度において申告義務が生じる 。
 そうだとすれば、時効援用後に、訴訟等において取得時効に係る事実が否定された場合こともあり得る。しかし、更正の請求により減額更正できるから、時効援用後も調停が継続中であるからといって、時効援用時に一時所得の発生がないというわけにはいかない。
 よって、土地等の財産を時効の援用により取得した場合、時効を援用した日の属する年度の一時所得となる。                              
以上  令和8年4月25日 税理士 原田潤子
 

2026年4月25日更新
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