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案内板

太陽光発電と税金(個人の方)

 個人で太陽光発電設備を設置している方、或いはこれから設置を考えている方は、税金面で少なくとも次の3点に影響がでます。

1 固定資産税の減免が受けられる可能性
  太陽光発電設備を設置する前に、その市町村から「先端設備等導入計画に係る認定」を受けますと、設備に係る償却資産税が3年間0円とか、1/3とかに減免されたりします。この認定を受けるに当たっては、「申請書」と併せて、認定支援機関による「確認書」の提出が必要となります。
  なお、市町村によっては、この取扱いをしていないところもありますので、市町村のHP等で事前に確認が必要です。
  また、太陽光発電設備一式  2,000万円前後 であれば、償却資産税は年28万円くらいになりますが、気を付けるべきは、電力会社に支払う「電力負担金」は固定資産ではなく繰延資産になるので、申告の際は、設備一式の価格に含めないことです。

2 消費税の還付を受けられる可能性
  設備を設置した場合、設備に係る消費税の還付が受けられることがあります。
  通常、売電金額(課税売上高)だけで年間1,000万円を超えることは無いので、消費税の申告は必要ありませんが、敢えて課税事業者になって申告することで消費税の還付申告ができます。前提として、届出書を提出して課税事業者になる必要がありますが、個人の場合、12月31日までに提出したら翌年から課税事業者になることができます(つまり前年の12月31日)。ただ、そこまで計画的に太陽光設備を設置できている人はほとんどいません。
そこで税法では、事業を開始した年の12月31日までに届出書を出せば、設置したその年も課税事業者となることができます。また、いざという時は「課税期間特例選択届出書」を提出することで課税事業者になる、こともできます。
 なお、税法上「高額特定資産」の取得になり、以後2年間は消費税を納めることになりますが、それでも十分還付金額の方が多いのは間違いありません。

3 所得税の還付を受けられる可能性
  他に給与所得があるサラリーマンなどの場合、所得税の還付が受けられることがあります。
  その仕組みは、太陽光発電設備について、減価償却資産の償却方法を定率法にすることで損益計算上赤字となり、他の給与所得等の黒字と通算することで源泉税の還付が生じるからです。そのためには、まず「青色申告の承認申請書」と「償却方法の届出書」を提出する必要があります。
  しかし、実はその前に注意すべきことがあります。
それは所得区分の判定です。通常太陽光発電は「事業」所得か「雑」所得になりますが、「事業」か「雑」かにより全く違った結果になるからです。「事業」所得になれば給与所得等との通算はできますが、「雑」所得となれば通算はできません(単体での赤字で終わり)。
  判定に当たっては、例えば土地建物の賃貸については、通達で規模の大きさが明示されており、規模によっての判定ができますが、太陽光発電の場合、その規定はありません。
  通常、建物の屋根に取り付けてある自家発電と売電を兼ねているものは「雑」所得と言われており、野外に設備だけ設置して売電を行っている場合、50kw以上なら「事業」と言われています。
  現実、個人の方で野外に売電目的で太陽光発電設備を設置している場合、ほぼ間違いなく50kw以上はありません。なぜなら50kw以上になると、経産省に「保安規定の届出」と「電気主任技術者の選任」が必要となり、さらに電気主任技術者に定期点検が義務付けられ、年2回点検料の支払いも生じるため、設備設置業者は必ず50kw未満(49.5kwなど)で施工工事を行っているからです。
  そうなると、「事業」か「雑」かの判定が難しくなります。
  たぶん「事業」として主張できる唯一の材料は、業者とのメンテナンス契約だと思います。年間10万円~20万円ぐらい支払うようになりますが、その業務委託契約の内容を見ると、だいたい①発電量の電力チェック、②年1回のモジュール(パネル等)の清掃、③年1回の下草刈りなどが入っています。
 こういう契約内容のままで、サラリーマンなど主たる仕事がある方が、メンテナンス業者に委託しているから「事業だ」と言えるかどうかです。まだ税務署と争ったという事例を聞いていませんのではっきりとしたことは言えませんが、あまりにも節税スキームとして税金還付を目的にしていると受け止められた場合(つまり、一種の投資と同じ)、過去の経験から税務署と争いになる可能性が相当高くなります。
 だからこそ、堂々と「事業」と言えるためには、原則論に戻って「自己の責任と計算」において「事業」を営んでいると言えるようにしておくべきです。
2021年5月21日更新
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畑中達司税理士事務所