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令和7年(2025年)分 年末調整の徹底解説:制度改正のポイントと実務への影響

(最初に)
令和7年度の税制改正は、働き方の多様化や深刻化する人手不足問題を背景に、長年の課題であった「年収の壁」問題に本格的にメスを入れる、極めて重要な改正となります。賃上げが進む中で、税制や社会保険の扶養から外れることを避けるために就労時間を調整する動きが、労働供給の大きな制約となっていました。本稿では、税務の専門家の視点から、今回の制度変更がもたらす具体的な変更点、個人と企業に与える影響、そして実務上の注意点について、分かりやすく徹底的に解説します。
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*国税庁ホームページ(令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について)
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 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
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1. 令和7年分 年末調整の主要改正点と実務上の注意点
このセクションでは、令和7年分の年末調整から適用される具体的な制度変更の内容を詳細に解説します。給与計算や年末調整の実務に直接関わる重要な変更点を網羅的に説明するため、担当者の方は特に注意してご確認ください。

1.1. 改正の背景:「年収の壁」問題への対応
今回の税制改正の根本的な目的は、労働力供給の制約となっている「年収の壁」問題への対応です。多くのパートタイム労働者が、所得税が課税され始める「103万円の壁」や、社会保険の扶養から外れる「106万円・130万円の壁」を意識し、収入が一定額を超えないように労働時間を調整する「就業調整」を行っています。今回の改正は、特に所得税に関する壁を大幅に引き上げることで、就業調整を気にせず、より柔軟で意欲的な働き方を促進することを狙いとしています。

1.2. 3つの主要な控除制度の変更点
今回の改正の核となるのは、「基礎控除」「給与所得控除」、そして新設された「特定親族特別控除」という3つの所得控除制度の変更です。

1.2.1. 基礎控除の大幅な引き上げ
納税者本人に適用される基礎控除が、合計所得金額に応じて多段階に引き上げられます。特に合計所得金額が低い層ほど手厚い控除が受けられる設計となっており、改正前との比較は以下の通りです。

注意点として、合計所得金額132万円超655万円以下の層に対する基礎控除の上乗せ措置(それぞれ30万円、10万円、5万円)は、令和7年・8年限定の時限措置である点にご留意ください。

1.2.2. 給与所得控除の最低額引き上げ
給与所得者の必要経費と見なされる給与所得控除について、その最低保障額が従来の55万円から65万円へ10万円引き上げられました。この変更は、特にパート・アルバイトなど、年収が比較的低い層の所得計算に直接的な影響を与え、税負担を軽減する効果があります。
令和7年度税制改正「基礎控除の特例」 給与所得者は令和7、8年ともに年末調整_000001
1.2.3. 「特定親族特別控除」の創設
今回の改正で新たに「特定親族特別控除」が創設されました。これは特に大学生世代の子供を持つ世帯にとって非常に重要な制度です。
• 対象者: 納税者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(令和7年時点で平成15年1月2日~平成19年1月1日生まれ)が対象です。
• 所得要件: 対象となる親族の合計所得金額が58万円超123万円以下(給与収入のみの場合、年収123万円超188万円以下)であることが要件です。
• 控除額: 親族の合計所得金額に応じて、納税者が受けられる控除額が最大63万円から段階的に減少する仕組みです。
• 戦略的意義: この新制度は、これまで「103万円の壁」によって抑制されていた学生の就労意欲を解放する戦略的な一手です。年収123万円超~188万円という新たな「税制優遇ゾーン」が生まれることで、世帯全体の収入計画が大きく見直され、企業はより意欲の高い若年層労働力を確保しやすくなるという、個人・企業双方にとっての好機が生まれます。

1.3. 扶養控除等の所得要件の緩和
配偶者や親族が扶養控除・同一生計配偶者の対象となるための合計所得金額の上限が、従来の48万円から58万円に引き上げられました。これにより、扶養の範囲内で働きたいと考える人々が、従来よりも多くの収入を得られるようになり、就業調整の緩和に繋がることが期待されます。

1.4. 実務上の注意点:申告書の変更と提出
制度改正に伴い、年末調整で従業員に記入してもらう申告書の様式と名称が変更されます。特に、基礎控除、配偶者控除、そして新設された特定親族特別控除の申告書が一つに統合され、正式名称が非常に長くなりました。
「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」
企業担当者は、従業員が自身に関係する控除を正しく理解し、申告書の該当箇所へ漏れなく記入できるよう、丁寧な案内と確認作業が求められます。特に、従業員がどの控除に該当するのか一目でわかるような、簡易的な社内向けFAQやチェックリストを事前に準備しておくことを強く推奨します。
これらの制度改正が、個人の手取り額や企業の給与計算に具体的にどのような影響を及ぼすのか、次のセクションで詳しく分析していきます。
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2. 税制改正が個人と企業に与える影響の分析
前述の制度改正は、単なる控除額の変更に留まりません。ここでは、これらの変更が個人(給与所得者)の働き方や家計、そして企業(給与支払者)の労務管理や給与規定にどのような影響を与えるのか、実生活や企業経営に直結する戦略的な視点から深く掘り下げて分析します。

2.1. 個人(給与所得者)への影響:「所得税の壁」の大きな変化
今回の改正で最も大きな影響を受けるのが、所得税が非課税となる年収上限、いわゆる「所得税の壁」です。

2.1.1. 従業員本人の「103万円の壁」から「160万円の壁」へ
従業員本人が所得税を課されずに働ける年収の上限は、大きく引き上げられました。
• 改正後の基礎控除(最低額):95万円
• 改正後の給与所得控除(最低額):65万円
この2つの控除額の合計により、給与収入が160万円以下であれば、所得税は課税されません。従来の「103万円の壁」から大幅な緩和となります。

2.1.2. 配偶者・扶養親族の「103万円の壁」から「123万円の壁」へ
配偶者や親族が、納税者の扶養から外れずに働ける年収の上限も引き上げられました。
• 改正後の扶養親族等の所得要件:58万円
• 改正後の給与所得控除(最低額):65万円
この合計により、パート等の給与収入が123万円以下であれば、納税者は配偶者控除や扶養控除の適用を受けることができます。

2.1.3. 大学生等の子供を持つ世帯への影響:「188万円」までの新たな選択肢
「特定親族特別控除」の創設は、特に大学生等の子供を持つ世帯に大きな影響を与えます。子供のアルバイト収入が年収123万円を超えても188万円以下であれば、親は何らかの控除(特定親族特別控除)を受けられるようになりました。これにより、これまで学生の労働時間を縛ってきた大きな制約がなくなり、世帯収入の増加と本人の就労経験の双方に、より大胆な選択肢が生まれます。


2.2. 最大の注意点:「社会保険の壁」との逆転現象
本改正を理解する上で、最も注意すべき点を警告として提示します。それは、所得税の壁が大幅に引き上げられた一方で、社会保険の加入義務が発生する「社会保険の壁」は変わっていないという事実です。
下記の図表が示す通り、多くの労働者にとって、所得税の壁よりも先に社会保険の壁に到達する「逆転現象」が発生します。 具体例を挙げましょう。年収103万円で就業調整していた従業員が、税制改正を機に年収120万円まで収入を増やしたとします。所得税は発生しませんが、勤務先の規模によっては社会保険(年額約15万円)の加入義務が発生し、結果的に手取り年収が90万円台に減少する可能性があります。この「働き損」を避けるための知識提供が不可欠です。

2.3. 企業(給与支払者)への影響と求められる対応
この複雑な制度改正に対し、企業側は以下の3つの観点から具体的な対応を取る必要があります。
• 年末調整実務の複雑化への備え 新設された控除や、所得段階に応じて細分化された基礎控除の計算に対応するため、給与計算システムのアップデートや、経理・人事担当者への専門的な研修が不可欠です。早期の準備が求められます。
• 従業員への的確な情報提供 特に「所得税の壁」と「社会保険の壁」の逆転現象は、従業員の誤解を招きやすいポイントです。収入を増やした結果、手取りが減るという事態を避けるため、丁寧な説明会や分かりやすい資料の配布などを通じて、従業員一人ひとりが自身の働き方を総合的に判断できるよう支援することが重要です。
• 家族手当・扶養手当等の社内規程の見直し 多くの企業では、家族手当や扶養手当の支給要件が、旧来の税法上の扶養親族の定義(年収103万円以下)を基準に定められている可能性があります。今回の改正に合わせてこれらの社内規程を見直さないと、意図しない支給対象者の増減が発生しかねません。速やかに現状の規程を確認し、必要に応じて見直しを検討することを強く推奨します。
今回の改正は令和7年分に留まりません。未来の変更点にも目を向け、長期的な視点での準備が重要となります。
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3. 令和8年以降の展望と今から準備すべきこと
法改正は一度きりで終わるものではありません。今回の改正に続き、令和8年分以降にも実務に影響する変更が予定されています。常に最新の動向を把握し、先を見越した準備をすることが不可欠です。

3.1. 令和8年からの「源泉控除対象親族」の導入
令和8年分以降の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」では、「源泉控除対象親族」という新しい概念が導入されます。これは、毎月の給与から天引きする源泉徴収税額の計算に、新設された特定親族特別控除の一部を反映させるための変更です。これにより、月々の給与計算実務にもさらなる変更が生じることになり、継続的な制度理解が求められます。

3.2. 継続的な制度変更への対応体制
今回の大きな改正を機に、企業は変化に強い中長期的な対応体制を構築すべきです。具体的には、顧問税理士などの専門家との連携を密にし、社内担当者の知識を定期的にアップデートする研修制度を設け、給与計算システムが法改正に迅速に対応できるか定期的に見直すなど、継続的な取り組みが企業の安定した運営を支えます。
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4. まとめと専門家への相談の重要性
本稿で解説した令和7年分年末調整の改正内容は、働き手と企業の双方に大きな影響を与えるものです。要点を以下にまとめます。
• 各種控除の引き上げにより、「所得税の壁」は大幅に緩和されたこと(103万円→160万円/123万円)。
• 新設された「特定親族特別控除」により、大学生等の子供がいる世帯の税負担が軽減されること。
• 最大の注意点は「社会保険の壁」であり、安易な就労時間延長は手取り減少に繋がるリスクがあること。
これらの複雑な制度改正に従業員や企業が個別最適に対応していくことは容易ではありません。特に、社会保険の取り扱いや社内規程の見直しなどは、専門的な判断が不可欠です。これらの複雑な改正を乗り切り、リスクを回避し、機会を最大化するためには、会計事務所や社会保険労務士といった専門家への早期相談が、個人・企業双方にとって不可欠な経営判断です。

「税と社会保障の壁」

壁の種類 給与年収の目安 主な影響
社会保険の壁 約106万円/130万円 健康保険・厚生年金への加入義務発生、保険料負担により
手取りが減少する可能性
扶養控除の壁 123万円 これを超えると配偶者や親が扶養控除を受けられなくなる
所得税の壁 160万円 これを超えると本人に所得税が発生する。

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