株式会社であれば、資金需要にかかわらず１千万円というお金が必要だった。当面の資金需要がない起業家にとってこれは「見せ金」という認識だった。だが、１円会社制度では、当面の資金需要＝資本金という認識になる。１千万円を掻き集めることなく、スタート時点で当面どれだけの資金が必要なのか、逆に、どれだけあれば成長していけるのか、というビジネスプランを小規模で展開できるチャンスと捉えている。
この制度を利用した起業家は、巨大資本で起業したベンチャー経営者に比べて、形式論や建前にこだわらず実質面を重視する傾向が強いように筆者は感じている。このような起業家の初期の段階に対して、コンサルタントとしてどのようにサービスを提供するか、筆者はひとつの方法を実践している。
コンサルティングのステージを二つに分けているのである。第一のステージは、設立段階である。企業再建計画実行や組織再編実行にて蓄積した法務手続き面やスケジュール管理面のノウハウを活かし、事業計画を視野に入れた設立手続き全般を起業家とともに画策する。第二のステージは開業準備段階、新規事業検討段階である。起業家のビジネスプランに徹底的に意見するのである。『社長の最良の相談相手』に終始し、リスクマネジメントを意識して頂くべくご指導申し上げ、リスク回避には社内外の専門家にて適宜対応する。
新会社法の施行により、制度が企業実態のバリエーションを豊かにすることになろう。その中で、多くの起業家の方々にチャンスが等しく与えられることになると信じている。