すでにご案内のように、会社法の制定によって、従来の株式会社であれば1000万円、有限会社は300万円という最低資本金制度が撤廃されました。これにより、これまでよりも容易に会社を設立することが可能になりました。
しかし、これから新たに会社設立しようとする方に知っておいていただきたいことは、会社を設立するということは法的な人格を新たに創出することであり、個人とは別の存在として税金の納付を始めとする法的責任を負わなければならないという点です。
個人事業と会社との間には、いくつかの有利な点、不利な点があるのですが、ここでは税金の負担について説明しておきます。
(1)法人税と所得税
個人事業にしても会社にしても、基本的には「所得金額」(≒売上高-経費)に対して税金が課されます。
個人事業の場合には、原則的に他の給与や年金に係る所得と合算されたうえで所得税が計算されます。
これに対して、会社の場合には法人税が課されるのですが、この両者は『税率』が異なっています。
所得税は「累進税率」が採用されており、所得金額によって、税率が最低5%から最大40%まで6段階に変化します。
これに対して、法人税は、原則として30%(中小企業の場合には一部22%)の「一定税率」です。
このため、開業まもなくて所得金額が少ない年度においては、通常は会社を設立するよりも個人事業の方が納税額が少くてすむことになります。
(もちろん、所得金額が一定額以上になったときは所得税の税率の方が法人税の税率よりも高くなっていくために、会社の方が有利になります。)
(2)住民税
また、国税である法人税とは別に、都道府県や市町村に対する「法人住民税」も課税されるのですが、この法人住民税には均等割といって、所得金額の多寡に関わらず課税される金額(規模によって変わりますが、一般的には最低7万円)が存在します。
すなわち、たとえ開業まもなくて赤字決算だとしても均等割の金額は支払わなければならないのです。
このように、会社を設立することによって個人で事業を開始するよりも税金の負担が多い場合があるということを知っておいていただきたいのです。
もちろん、会社設立することによって納税額が増えるとしても、会社なりのメリットもあります。
結局、新たに事業を立ち上げようとする場合に、個人で始めるべきか、または会社を設立すべきかについては、皆様のこれからの事業計画や売り上げの予想などによって、どちらを選択すべきかの判断が変わってきます。
まずは皆様からお話をお聞きした上で、お仕事の内容や今後のご希望などをお聞きした上で、より適切な方法を提案させていただきます。