発行日:2026年08月31日
2026年9月の税務
9月10日
●8月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
9月30日
●7月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●1月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、4月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の6月、7月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(5月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
AIで業績は変わるか?データが語る事実
◆増収企業ほどAIを使っている
独立行政法人中小企業基盤整備機構が令和8年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」では、直近3年間で増収傾向にある企業ほどAIを積極的に活用していることが明らかになっています。増収企業がAI導入目的として「人手不足対応」を挙げた割合は35.4%で、減収傾向企業の23.6%を約12ポイント上回りました。
業績の良い会社がAIを使っているのか、AIを使っているから業績が良くなったのかは一概には言えませんが、少なくとも「AIは成長している企業が取り組んでいるもの」という実態は確かです。
◆経営部門で効果が突出した理由
部門別の導入効果をみると、経営・企画部門でのAI活用が特に高い評価を受けています。
品質向上・付加価値創出・業務効率化の3項目すべてで8割以上が効果ありと回答しており、これはIT導入の同部門と比べても一段高い水準です。経営者自身が生成AIを使って市場分析・資料作成・アイデア出しに活用するケースが増えており、「まず経営者自身が使ってみる」ことが最も効果的な入り口といえます。
◆付加価値創出はITの3倍
AI活用で特に注目すべきは「付加価値創出」の効果です。AIで付加価値創出に効果ありと答えた企業は22.3%で、ITの7.4%の約3倍にのぼります。
業務の効率化にとどまらず、新しい価値を生み出す道具としてAIが機能し始めていることを示す数字です。情報通信業(38.9%)や不動産業(33.3%)では特にこの傾向が顕著で、業種によってはAIが競争力そのものになりつつあります。
◆AIを使うと何が変わるのか
AI導入企業の83.2%が業務効率化に効果を実感しており、「時間が生まれた」「品質が上がった」という変化が多くの現場で起きています。
コスト削減効果は1〜3割が中心で劇的な削減は難しいものの、浮いた時間を付加価値の高い業務に充てられることが最大のメリットです。まずは議事録作成・文書作成・情報収集といった日常業務から試してみてください。小さな成功体験が社内への普及を後押しします。
今年の税制改正 公的年金等控除額の控除制限
◆高齢者の就労意欲促進策として
在職老齢年金制度改正で令和8年4月から、年金減額基準額(賃金と厚生年金の月合計)が65万円(旧51万円)に引き上げられました。趣旨は高齢者就労促進です。
たとえば、給与月収80万円、年金月額20万円だとしたら、改正後は、(80+20万円-65万円)÷2=17.5万円になり、これが20万円の年金月額からのカット額になります。前は、全額カットでした。なお、カット額は、事後繰延べはなく、永久消滅です。
◆給与控除とのアンバランス緩和が趣旨
その一方で、今年の税制改正で、給与と公的年金との両方の収入がある者については、その年の給与所得控除額と公的年金等控除額との合計額に、上限が設けられることになりました。上限額は280万円で、上限控除額の減額は、公的年金等控除額から行われます。(令和9年から施行)
たとえば、給与月収80万円、年金月額20万円だとしたら、給与所得控除(195万円)と公的年金等控除(110万円)の合計で305万円の控除を受けることになりますが、同じ1,200万円の収入のすべてが給与だけの場合の控除額は195万円のみです。ここに不合理があるとの趣旨です。
◆年金カットされたら上限控除にならない
ところで、上限の280万円前後の層とは、年金を受取りながら、しっかり給与を得ている層ですが、その人たちは、在職老齢年金制度により年金収入が相当カットされている人たちです。カットされているので、上限制限の対象になる年金控除額などなくなっているはずです。
それでは、今年の改正は、在職老齢年金での年金カットをうまく潜り抜けている人が対象なのでしょうか。それもあるでしょうが、それだけではないと思われます。
◆大企業や公務員系統の受給者が対象
280万円控除制限のターゲットは、在職老齢年金制度で年金カットの対象になっている2階建て部分の厚生年金ではなく、その対象になっていない企業年金(3階建て)、私的年金(4階建て)だと思われます。
在職老齢年金の支給カットは、2階建てまでしかない、中小企業関係受給者に大きな打撃を与えていましたが、3階建て4階建ての年金のある大企業や公務員系統の受給者には、その影響が相対的でした。その2階建て以外の年金にも標的を向けだした、というのが今年の改正の内容です。
税制・社会保険の適用 それぞれの「年収の壁」
◆今年の税制改正で所得税年収の壁が見直し
これまで「年収を抑えて扶養の範囲で働きたい」という場合、昨年までは所得税の壁は年収160万円でしたが令和8年には178万円に引き上げられます。扶養家族が働く時間が増えても課税されるラインが上がりました。
◆年収の壁は住民税や社会保険もあり
収入が大体年収100万〜110万円を超えると住民税が掛かります。こちらは所得税に比べると課税ラインが低く、課税基準は自治体ごとに違うので確認が必要です。
社会保険の加入基準となる「106万円の壁」は現在51人以上の被保険者がいる事業所で適用され「所定内賃金が月平均8.8万円以上」「週所定労働時間20時間以上」「学生でない」方が対象になります。ただし令和8年10月からは「年収106万円」の壁は撤廃される予定です。
◆影響大きい「年収130万円の壁」
これは50人以下の全事業所も対象です。配偶者の社会保険の扶養家族で加入している場合、基準を超えると扶養から外れ自分で社会保険に加入します。扶養家族が勤めている事業所の社会保険に入るか、国民健康保険・国民年金に加入します。社会保険は保険料負担が大きいため手取りが減るということがあります。厚労省は助成金等でその分をカバーするような制度もつくっていますが、対象者に使えるかは申請をしてみないとわかりません。
また、社会保険の事業所規模の拡大で今までは扶養家族であっても、扶養家族が勤める事業者が拡大対象事業所になれば扶養からは外れるケースも出てきます。
税制が大幅に所得税の壁を引き上げでやや楽になったかと思っても、社会保険の壁が存在すると手取りを気にする短時間労働者の働き方はそれほど大きな変化は見られないでしょう。
◆高齢者就業には一定の変化が
一方、働き方の変化でいうと扶養家族ではありませんが、企業に勤める高齢者で厚生年金保険の適用者は在職老齢年金の年金停止ラインが月65万円と大幅に上がったので、年金カットを意識せず就業がしやすくなったといえるでしょう。
相続時精算課税贈与で家族会議
◆実質は相続税の前払い
相続時精算課税制度では、贈与者が亡くなると先に贈与した財産の価額を相続財産の価額に加算して相続税額を計算します。既に納付済の贈与税額は相続税額から控除され、贈与税額の方が大きいときは差額が還付されます。贈与ではあるものの、相続税額の計算で納税額を計算し直すため、実質は相続税の前払いといえます。
◆メリット1.少ない税負担で財産移転
相続時精算課税贈与では贈与財産の価額から特別控除として2,500万円が控除され、その年に控除しきれなかった残額は、次年度以降の贈与まで持ち越されます。贈与税は控除後の残額に対し、一律20%と低率のため、贈与時の税負担は少なく、不動産や金融資産などまとまった金額の財産を早期に移転することができます。
さらに、令和6年1月1日以後の相続時精算課税贈与には基礎控除110万円が設けられ、特別控除2,500万円の前に基礎控除が控除されるようになりました。その年の贈与額が110万円以下であれば、贈与税を申告する必要もなく、また、基礎控除110万円までの贈与部分は相続財産の価額に加算されないので負担が軽減されています。
◆メリット2.家族で相談する機会ができる
相続の備えは子どもからは言い出しにくいものです。相続時精算課税贈与は、将来の相続で精算が行われるため、贈与の検討をきっかけに家族で財産の利用方法について話す場をつくることができます。親は財産移転について自分の思いを伝え、配偶者や子どもたちも自身の生活スタイルを想定して話すことができます。家族で早期に相続人の人生設計に応じた計画を立てることが可能となり、それぞれが納得できる道筋を見つけることにもつながります。
◆他にもあるメリット
相続税の申告では贈与時の価額で評価されるので、土地や株式などの資産の価格が上昇する市場環境のもとでは税負担が少なくなります。また、地震や津波など災害で贈与を受けた財産が被害を受けたときは、相続時の評価額が減額されます。
◆小規模宅地の特例は適用不可
なお、小規模宅地の特例は相続または遺贈で取得した不動産に適用され、贈与を原因とする相続時精算課税には適用されません。相続時精算課税は一度選択すると撤回できないので、相続財産に不動産があるときは、事前の検討が必要となります。
AI導入が失敗する共通点
◆4割の会社が「入れたのに使えない」
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査によると、AIを全社的に導入済みの企業でも「従業員による活用が進まない」と答えた割合が40.4%にのぼっています。ITの同項目(約28%)を大きく上回るこの数字は、「AIを契約すれば生産性が上がる」という期待が現実と乖離していることを示しています。
AIはITと異なり、使い手のプロンプト(指示文)の質によって出力結果が大きく変わる特性を持ちます。社内でプロンプト教育や使い方研修を行わずにツールだけを導入しても、成果は生まれません。「ツールの契約」と「AIの活用」はまったく別物であることを、まず経営者自身がしっかりと理解しておく必要があります。
◆コストの罠は導入後に現れる
導入前から気をつけたい落とし穴が「ランニングコスト」です。AI導入後の最大の運用課題として44.0%の企業が「ランニングコストが高い」を挙げています。初期費用だけに目が向きがちですが、月次・年次の継続費用を事前に試算しておかないと「思ったよりお金がかかる」という事態になります。導入を決める前に、必ず1年間の総コストをシミュレーションしてください。
◆セキュリティ不安の正体
セキュリティへの不安も見逃せません。AI導入にあたり懸念を持つ企業は75.2%にのぼり、ハルシネーション(もっともらしい虚偽情報の生成)や機密情報の漏洩リスクへの不安が自由回答で多く挙げられました。対策として最低限、①入力情報の学習設定オフ、②社外秘・個人情報の入力禁止ルールの策定、③利用ルールの社内周知の3点を導入前に必ず整備してください。このような事前準備こそが、導入後の混乱を防ぐ最大の保険になります。
◆失敗を避けるための3つの準備
失敗を避けるためにまず取り組むべきことは、「どの業務に使うかを一つだけ決める」ことです。全社展開を焦らず、まず一つの業務で小さな成功体験をつくることが定着への近道です。社内ガイドラインと簡単な使い方研修をセットで準備したうえで導入に踏み出しましょう。一歩ずつ着実に積み上げることが、AI活用を組織に根づかせる唯一の方法です。