1.概況
企業価値評価において、土地や建物など従来型有形資産の重要性が低下し、知的財産権など無形資産の重要性が急激に増大している。S&P500企業における知的財産権専有割合推移は、1985年の32%→2015年87%へと大きく増加した(+55%)(出典:平成30年5月 内閣府知的財産戦略事務局)。税において知的財産権の存在は無視できなくなっている。
無形固定資産は国外移転が容易であるため、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトでも活発な議論が行われた(行動計画8)。翻って国内でも平成29年税制改正大綱で「所得相応性基準」の導入可能性について言及された。
今後も知的財産と税の動向から目が離せない。
2.定義(知的財産基本法第2条、BEPS行動計画8)
(1)知的財産権とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
(2)知的財産とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
(3)知的資産とは、知的財産権および知的財産のほか、人的資産、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク、技能等をいう。
(4)無形固定資産とは、有形資産又は金融資産でないもので、商業活動における使用目的で所有又は管理することができ、比較可能な独立企業間の取引ではその使用又は移転に際して対価が支払われるような資産をいう。
(経済産業省)http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/teigi.html
3.無形資産の評価方法~税~
(1)法人税:知的財産家の譲渡は時価で行う(法人税法第22条2項)
(2)移転価格税制:時価として独立企業間価格を算定(租税特別措置法第66条の4)
(3)相続税法:特許権「権利に基づき将来受ける補償金の額の基準年利率による
複利現価の額の合計額」によって評価する(財産基本通達140)
4.所得相応性基準
(1)従来の算定方法
① cost approach(取得原価)
② market approach(類似事例)
③ income approach(DCF)
(2)所得相応性基準(Commensurate With Income Standard)
〇 適用対象は、評価が困難な無形資産(HTVI/Hard to Value Intangible)とする。
〇 HTVIとは
・無形資産及び無形資産に係る権利で、
・関連者間の移転の時点で信頼できる比較対象取引がなく、
・取引時点で移転される無形資産から生じうると予想される将来の
キャッシュ・フロー若しくは収益、又は無形資産の評価において
用いられる過程が極めて不確実であるために、移転時点における
当該無形資産の最終的な成功の水準の予測が困難であるもの をいう。
〇 今後、国際標準となる可能性がある。
(出典:国税庁 無形資産の国外関連者への移転等に係る課税のあり方-わが国への所得相応性基準の導入の検討-)
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/59/05/hajimeni.htm