小田満事務所
税理士・行政書士・事業承継コンサルタント
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保証債務の履行のための資産の譲渡に先立つ借入金の取扱い【2分の2】
保証債務の履行のための資産の譲渡に先立つ借入金の取扱い(その2)
税理士 小田 満
2 借入金で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合の取扱い
保証債務を履行すべき日時までに弁済資金が確保されていないケースがあることを考慮し、実務上の取扱いでは、次のように、「新たな借入金」で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合の取扱いを定めている(所基通64-5)。
(1)保証債務の履行を新たな借入金で行い、「その新たな借入金を返済するために資産の譲渡があった場合」においても、その資産の譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは、「保証債務を履行するための資産の譲渡があった場合」に該当するものとする。
(2)新たな借入金を返済するための資産の譲渡が保証債務を履行した日からおおむね1年以内に行われているときは、実質的に保証債務を履行するために資産の譲渡があったものとして差し支えない。
この(1)の取扱いの背景には、この場合の資産の譲渡は「新たな借入金の返済のための譲渡であって、保証債務を履行するための譲渡ではない」というところにある。しかし、それでは形式的にすぎるため、「やむを得ず一時的に借入金で保証債務を履行しておき、その後資産を譲渡してその借入金を返済するなど、明らかにその資産の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係があるときは、実質的に保証債務の履行のための資産の譲渡として認める」こととしたものである(「所得税基本通達逐条解説」の所基通64-5の項の解説)。
更に、(2)では、「おおむね1年以内」の資産の譲渡については、無条件で実質判断をすることとしているところであるが、取扱上は、「1年を超えて行われた場合であっても、その譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであることについての明確な立証がなされたとき」には特例の適用を認めることとしている(同上の解説)。
3 銀行預金で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合の取扱い
上記2の取扱いは「債務を弁済するための資産の譲渡」に関するものである。その債務は当初は保証債務であったが、それを新たな借入金で弁済することによって新たな債務が発生している。要するに債務の内容は変化したが債務自体は継続している。
上記2の取扱いが債務自体の継続に着目して特例の適用対象としたものであるとすれば、銀行預金で保証債務を履行した場合には、その履行をした時点で債務は存在しなくなるので、その部分については特例の適用対象として認められていないのが実情のようである。
しかし、あえて言うならば、次に掲げることからして、銀行預金で保証債務を履行した場合についても、その資産の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係があることが明らかであるときには特例の適用対象として認めるべきではないかと考える。
(1)法令上の文言からは、資産の譲渡と保証債務の履行との間の因果関係を前提としていることは判読できるが、資産の譲渡の時期
と保証債務の履行の時期の違いや、保証人の支払能力の違いによって適用関係が異なるなどとは判読できない。
(2)所得税基本通達では、「新たな借入金の返済のために資産を譲渡した場合」であっても、「保証債務を履行するための資産の譲渡があった場合」に該当するときがあることを明らかにしたものであって、銀行預金で保証債務を履行した場合には特例の適用対象とならないことまで定めているものではない。むしろその逐条解説では、資産の譲渡と保証債務の履行との間の因果関係やその譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであるか否かを強調している。
(3)多額の銀行預金がある場合においてそれを使用せず、新たな借入金をした上で資産を譲渡することにより資産の値上がり益の課税を回避することが可能になる。 (了)
税理士 小田 満
2 借入金で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合の取扱い
保証債務を履行すべき日時までに弁済資金が確保されていないケースがあることを考慮し、実務上の取扱いでは、次のように、「新たな借入金」で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合の取扱いを定めている(所基通64-5)。
(1)保証債務の履行を新たな借入金で行い、「その新たな借入金を返済するために資産の譲渡があった場合」においても、その資産の譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは、「保証債務を履行するための資産の譲渡があった場合」に該当するものとする。
(2)新たな借入金を返済するための資産の譲渡が保証債務を履行した日からおおむね1年以内に行われているときは、実質的に保証債務を履行するために資産の譲渡があったものとして差し支えない。
この(1)の取扱いの背景には、この場合の資産の譲渡は「新たな借入金の返済のための譲渡であって、保証債務を履行するための譲渡ではない」というところにある。しかし、それでは形式的にすぎるため、「やむを得ず一時的に借入金で保証債務を履行しておき、その後資産を譲渡してその借入金を返済するなど、明らかにその資産の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係があるときは、実質的に保証債務の履行のための資産の譲渡として認める」こととしたものである(「所得税基本通達逐条解説」の所基通64-5の項の解説)。
更に、(2)では、「おおむね1年以内」の資産の譲渡については、無条件で実質判断をすることとしているところであるが、取扱上は、「1年を超えて行われた場合であっても、その譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであることについての明確な立証がなされたとき」には特例の適用を認めることとしている(同上の解説)。
3 銀行預金で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合の取扱い
上記2の取扱いは「債務を弁済するための資産の譲渡」に関するものである。その債務は当初は保証債務であったが、それを新たな借入金で弁済することによって新たな債務が発生している。要するに債務の内容は変化したが債務自体は継続している。
上記2の取扱いが債務自体の継続に着目して特例の適用対象としたものであるとすれば、銀行預金で保証債務を履行した場合には、その履行をした時点で債務は存在しなくなるので、その部分については特例の適用対象として認められていないのが実情のようである。
しかし、あえて言うならば、次に掲げることからして、銀行預金で保証債務を履行した場合についても、その資産の譲渡と保証債務の履行との間に強い因果関係があることが明らかであるときには特例の適用対象として認めるべきではないかと考える。
(1)法令上の文言からは、資産の譲渡と保証債務の履行との間の因果関係を前提としていることは判読できるが、資産の譲渡の時期
と保証債務の履行の時期の違いや、保証人の支払能力の違いによって適用関係が異なるなどとは判読できない。
(2)所得税基本通達では、「新たな借入金の返済のために資産を譲渡した場合」であっても、「保証債務を履行するための資産の譲渡があった場合」に該当するときがあることを明らかにしたものであって、銀行預金で保証債務を履行した場合には特例の適用対象とならないことまで定めているものではない。むしろその逐条解説では、資産の譲渡と保証債務の履行との間の因果関係やその譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであるか否かを強調している。
(3)多額の銀行預金がある場合においてそれを使用せず、新たな借入金をした上で資産を譲渡することにより資産の値上がり益の課税を回避することが可能になる。 (了)
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