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令和5年度税制改正と令和6年与党税制大綱

ニュースです。今日(令和5年12月14日)、令和6年度与党税制大綱が公表されました。全文、このHPで確認できます。

令和5年度税制改正の動画です。

財務省バージョン・税務研究会バージョンの動画と財務省が公表した令和5年税制改正の
小冊子を添付しました。

改正の目玉
1:相続税の生前贈与加算
 仮に相続開始日が毎年8月15日だった場合の、令和6年から令和13年までの加算対象期間と加算期間は下記のとおりです。

相続開始日        加算対象期間            加算期間

令和6年8月15日    令和3年8月15日~令和6年8月15日          3年間

令和7年8月15日    令和4年8月15日~令和7年8月15日          3年間

令和8年8月15日    令和5年8月15日~令和8年8月15日          3年間

令和9年8月15日   令和6年1月1日~令和9年8月15日     3年+8カ月15日

令和10年8月15日    令和6年1月1日~令和10年8月15日    4年+8カ月15日

令和11年8月15日    令和6年1月1日~令和11年8月15日   5年+8カ月15日

令和12年8月15日    令和6年1月1日~令和12年8月15日    6年+8カ月15日

令和13年8月15日    令和6年8月15日~令和13年8月15日       7年間

改正法は令和6年1月1日以降の贈与に適用します。

生前贈与加算の対象者は変わりません。
2.相続時精算課税制度

1. 相続時精算課税制度とは? これまでの条件を確認

1-1. 概要
相続時精算課税制度とは、一定の要件に該当する贈与者と受贈者間で財産の贈与を行った場合に選択できる贈与税の計算方法のことを言います。

この制度を選択すると、贈与財産の累計が2500万円(特別控除)までは贈与税がかかりません。累計が2500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。その後相続が発生したときはその精算課税の贈与財産全額と相続財産を合計して相続税の計算を行い、すでに支払った贈与税がある場合にはその贈与税を精算して差額の相続税を納めます。そのため、この制度は贈与税と相続税を通じた納税をすることができます。

1-2. 適用対象者
相続時精算課税制度はすべての人が選択できる制度ではありません。この制度は60歳以上の父母や祖父母(贈与者)から18歳以上(2022〈令和4〉年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳以上)の子や孫(受贈者)に対して財産を贈与した場合において選択できる制度です。

1-3. 相続時精算課税制度選択届出書の提出が必要
相続時精算課税制度を選択する場合、最初に贈与を受けた年の翌年3月15日(贈与税の申告書の提出期限)までに相続時精算課税選択届出書及び一定の書類を贈与税の申告書に添付して税務署へ提出しなければなりません。

また、一度この制度を選択すると、選択した年分以降のその届出書を提出した贈与者と受贈者間の贈与はすべて相続時精算課税の贈与になり、二度と暦年課税の贈与に戻ることができません。

1-4. 累計2500万円を超えたら20%の贈与税がかかる
相続時精算課税制度は、相続時精算課税選択届出書を提出した贈与者と受贈者間の贈与財産が累計2500万円(特別控除)になるまでは贈与税がかかりません。一方で、累計が2500万円を超えた場合は超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります。

1-5. 少額贈与でも期限内申告が必要
相続時精算課税制度は特別控除の累計2500万円まで贈与税はかかりませんが、贈与税がかからなくても贈与をした場合は期限内に贈与税申告の提出が必要です。10万円など少額贈与でも常に贈与税申告が必要になります。

2. 新しい相続時精算課税制度の変更点「110万円の基礎控除」
2024年1月から適用される今回の改正により、特別控除の2500万円とは別に年間110万円まで基礎控除が認められます。そのため、年間110万円までの贈与であれば以下のような特徴があります。

贈与税がかからない
贈与税の申告が不要
相続税がかからない
2-1. 贈与税がかからない
令和5年度の税制改正において相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が創設されます。現行のこの制度は累計2500万円(特別控除)まで贈与税がかかりませんが、今回の改正により特別控除とは別に年間110万円まで基礎控除が認められます。そのため、年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからず、かつ、累計2500万円の特別控除に含める必要がありません。

2-2. 贈与税の申告が不要
現行の相続時精算課税制度は少額の贈与でも贈与税申告が必要ですが、今回の改正により年間110万円以下の贈与については贈与税申告が不要になります。

2-3. 相続税がかからない
現行の相続時精算課税制度はすべての贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算しますが、今回の改正により年間110万円までの贈与財産は相続財産に加算する必要がなくなります。

なお、これら改正は2024年(令和6年)1月1日以降に贈与により取得する財産にかかる相続税または贈与税について適用されます。

3. 現行と改正後の相続時精算課税制度の比較
3-1. 贈与税の計算方法
現行
(贈与額-2500万円(※))×20%

改正後
((贈与額-年間110万円)-2500万円(※))×20%

(※)特別控除(前年以前にすでに特別控除を利用している場合は、2500万円からすでに利用した特別控除額を控除した金額)

3-2. 贈与税の申告手続き
現行
贈与の都度申告が必要

改正後
贈与の都度申告が必要(ただし年間110万円以下の贈与は申告不要)

3-3. 相続財産に加算する贈与財産
現行
相続時精算課税制度を適用したあとのすべての贈与財産

改正後
相続時精算課税制度を適用したあとのすべての贈与財産(ただし年間110万円の贈与財産は除く)
4. 「年間110万円まで基礎控除」相続時精算課税制度と暦年課税制度でどう違う?

4-1. 生前贈与加算の対象になるかどうか
暦年課税制度は年間110万円以下の贈与でも相続開始前7年以内の贈与は生前贈与加算の対象(※)になり相続財産に加算します。一方で相続時精算課税制度は年間110万円以下の贈与は期間関係なく生前贈与加算の対象になりません。

4-2. 暦年課税制度には戻れない
一度選択した相続時精算課税制度は暦年課税制度に戻ることができません(改正はありません)。年間110万円までは贈与税がかからず相続税もかからないことに心惹かれて相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年課税制度に戻れない点は認識しておきましょう。相続時精算課税制度を選択する場合はこの制度を選択する前にきちんと検討をする必要があります。

5. 新・相続時精算課税制度のメリット

新しい相続時精算課税制度のメリットとしては、「年間110万円までは暦年課税のような生前贈与加算がない」「特別控除2500万円を使い切ってしまっても、毎年110万円の基礎控除を有効活用することができる」「将来値上がりの期待できる財産を早めに贈与すれば、相続税を抑えることができる」といったものが挙げられます。

5-1. 年間110万円までは暦年課税のような生前贈与加算がない
相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が創設されたことにより、現行の制度より贈与しやすくなります。特にこの制度を選択して年間110万円の基礎控除を有効活用することにより期間関係なく生前贈与加算の対象にならないため、相続税に影響を与えず贈与のみで完結できることは大きなメリットの一つと考えられます。

5-2. 事業承継税制で相続時精算課税制度を選んだケース
事業承継税制を利用して後継者が自社株式の贈与の猶予を受けた場合、相続時精算課税制度を選択して特別控除2500万円を使い切ってしまうケースがあります。

特別控除を使い切ってしまうと、その後の贈与が一律20%課税されてしまうことや常に贈与が相続財産に加算されてしまうため、この制度を選択したうえで事業承継税制を利用するとその後に贈与がしづらい状況でした。今回の改正を受けて、特別控除2500万円を使い切ってしまっても、毎年110万円の基礎控除を有効活用することでその後の贈与がしやすくなります。

5-3. 将来値上がりが期待できる財産があるケース
相続時精算課税制度のメリットは贈与時の価格で相続財産に加算することができることです。これを利用して将来値上がりの期待できる財産を早めに贈与すれば、相続税を抑えることができます。

6. 相続時精算課税制度の注意点
新たな相続時精算課税制度を利用する際は、下記の3点に注意しましょう。

年間110万円を超えたら贈与税申告が必要になる
小規模宅地等の特例が使えなくなる
判断と計算が非常に面倒
6-1. 年間110万円を超えたら贈与税申告が必要になる
今回の改正により相続時精算課税制度のメリットが高まる一方で、注意点もあります。改正により年間110万円の基礎控除が創設されましたが、メリットがあるのは年間110万円までです。110万円を超える場合は贈与税申告が必要になり、超えた部分に対しては相続開始前の期間に関係なく必ず相続財産に加算する必要があります。

また、贈与税申告が期限後申告になると2500万円の特別控除枠を利用することができず一律20%の贈与税が課税されますので、申告期限にも注意が必要です。

6-2. 小規模宅地等の特例が使えなくなる
相続時精算課税制度を選択して土地などを贈与した場合、その土地は小規模宅地等の特例を使うことができません。贈与税がかからなかったとしても、小規模宅地等の特例が使えないことでかえって相続税が高額になる可能性がありますので、小規模宅地等の特例が適用できそうな土地を贈与する場合は慎重に検討する必要があります。

6-3. 判断と計算が非常に面倒
今回の改正により年間110万円の基礎控除を超える部分は期間関係なく相続財産に加算されます。そのため、この制度が利用しやすくなった反面、どこまでが基礎控除の範囲でどこからが相続税の対象になるかきちんと記録していないと、いざ相続が発生したときに相続財産に加算する贈与財産の計上漏れや過大計上が生じる可能性があります。したがって、手間が増える部分もあることに注意する必要があります。

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2024年2月28日更新
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