PBRが1倍を下回るということは、株式市場がその企業に対し成長を期待できないと評価していることになります。成長性のある企業はキャッシュを収益性の高い投資に振り向け、将来のより大きな利益を期待できますから、株価は上昇し、PBRは1倍を超えることが期待できます。ところが、成長性のない企業は、利益は出せるのですが、利益から生まれるキャッシュの投資機会を見いだせず、キャッシュを貯めこむしかなくなります。その結果、キャッシュリッチな自己資本比率の高い会社がPBR1倍割れを招きやすくなります。株式会社は最終的には株主のものですから、原理的には投資に使えないキャッシュは配当や自己株式の取得などで株主に還元すべきだということになります。
PBR1倍割れ企業に求められるのは、ROE(自己資本利益率=当期純利益/自己資本)の引き上げです。そこでキャッシュの使い道が問われます。分子の利益向上のためにキャッシュが使えればいいのですが、前述したように投資先がなければ株主還元を行い、分母を圧縮してROEの向上を図るしかなくなります。
それがPBR1倍割れ改善に対する一番安直な処方箋になってしまうのですが、果たしてそれが日本経済の再生につながるかは疑問です。株主に還元されたキャッシュが他の日本企業の成長に向かうことができればいいのですが、国内に成長機会が限られることに変わりはありません。還元されたキャッシュがあくまで成長を求めなければならないとすれば、海外に向かわざるを得ず、日本経済自体は縮小再生産に陥ってしまうと考えられるからです。
ROEの向上は分母である自己資本の削減ではなく、分子の利益増大を目指すのが本筋であることを経営者は忘れてはなりません。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)