実は、この対立には単に引当金の設定だけにとどまらず、現在会計が直面する根深い問題が内包されています。
会計はこれまで客観性を重視し、過去の実績に基づき財務諸表を作成してきました。資産価格でいえば、最も客観性が備わったものとして取得価格を重視してきました。一方、国際会計基準等において新しく登場する考え方は、投資家の期待に応えるために、会計が表現する財務諸表は、現在をより的確に表現するものでなければならないとするものです。その概念からすれば、「資産価格は将来キャッシュフローの現在価値である」ということになります。
この考え方の理論的な正しさは分かるのですが、問題は将来を評価することの客観性です。将来の評価は評価者によって変わってしまい、その結果、作成者次第で財務諸表の数値が変わってしまうことに対する困惑です。一方、将来の動向を財務諸表に取り込もうとする考え方からすれば、財務諸表は作成者次第で変わっても構わないという立場に立ちます。ただ、財務諸表作成者が負うべき数値結果に対する説明責任が問われることになります。多くの財務諸表利用者に納得してもらわなければなりませんから、その説明責任はかなり重大です。
これから「将来」を財務諸表に取り込もうとするとき、財務諸表作成者はその数値結果に対する説明責任が一層重要になることは認識しておかなければなりません。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)