では、中小企業が経営計画を策定することによって具体的にどのような効果がもたらされるのでしょうか。そこで中小企業白書2021年版において、事業継続力を意識した経営計画策定により迅速な感染症対策と新事業創出を実現した企業の事例として取り上げられた北良株式会社(岩手県北上市)の取り組みについてみていきましょう。
北良株式会社は、家庭用・産業用・医療用ガスの製造・販売及び在宅患者向けの医療サービスを主力事業とする企業です。同社では2008年の岩手・宮城内陸地震を機に事業継続への意識が高まり、2011 年の東日本大震災によって新たに露見した課題も踏まえて、事業継続を最優先する経営計画を策定しました。
2020年、感染症流行の兆しが見えると、体温を報告していない者には催促メールが送られるシステムを導入しました。また、消毒用アルコールやアクリル板の設置、作業エリアの区分けなど早急にオフィスのレイアウト変更が行われ、テレワークの交代実施が開始されました。
感染症流行を踏まえた社内の体制整備を進める一方で、同社の社長は、友人である酒造メーカーからの協力を得て、消毒用アルコールの製造に着手しました。無償配布を条件に行政から製品の取り扱いが許され、岩手県内の医療機関や在宅患者、従業員へ配布を開始できました。消毒用アルコールの配布は、結果的に同社の信用やイメージの向上にもつながりました。
このように事業継続を最優先とした経営計画の存在によって、事業継続に対する意識を高めることで従業員を守るだけでなく、地域貢献にまでつながるなどの効果がもたらされたのです。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)