節税対策の優先順位の一番は、お金がかからず税金が安くなる対策を考えることです。これは、換金性のある正しい決算書を作成する作業でもあります。不良の売掛債権・価値のない固定資産・回収見込みのない貸付金・経費である仮払金・立替金・価値の下落した商品等の在庫・値下がりしている有価証券・返金されない敷金・保証金等、決算書を正しく作成する作業が結果として節税になるのです。企業の健全な経理をする意味でも最初に手をつけるべき決算対策です。
【1】売掛債権の中に不良債権はありませんか?
不良債権を見直し、個別貸倒引当金も設定が可能なものについても、漏れなく設定し、また回収見込みの立たないものは債権放棄等により貸倒れ処理を行ないます。
1.個別貸倒引当金の設定の条件
貸倒引当金の個別繰入は、まだ貸倒損失として計上するほどの事実は発生していないが、その債権の相当部分について回収不能と認められる事実の発生等がある場合に、実質的にその債権の部分的貸倒れを認めるものです。
その取扱いは、形式基準によるものと実質基準によるものとがあります。
2.貸倒損失の計上の条件
貸倒損失は、債務者の債務弁済能力を個別かつ具体的に検討し、債権が回収不能と認められる場合にその計上が認められます。
★債権放棄・・・債権者の債務超過の状態が相当期間継続し、弁済が受けられない場合の書面による債務免除
債権放棄の内容証明書式サンプル
【注意事項】
(1)回収不能である客観的証拠、請求書、督促書、弁護士等による督促内容証明等を揃えておくこと。銀行取引停止や不渡手形、小切手の現物保管等を用意しておいてください。
(2)債務の免除は、全額免除だけではなく、一部免除でもかまいません。
(3)税務上の注意点としては、債務免除が贈与の扱い【寄付金課税】とならないように注意することです。資本関係、取引関係、役員の状態によっては、債務免除をしても貸倒損失/売掛金という処理を認めず、寄付金/売掛金となり、一定額を超えた寄付金については税務上の損金となる場合もあります。
(4)繰越欠損の関係で、債権放棄の時期が7年前か否かが問題になります。貸倒損失の時期判断との整合性を確認してください。
【2】棚卸資産による節税
1. 低価法を採用し、評価損を計上する
不良在庫の評価損を計上する
2. バーゲン・廃棄処分を行なう〔不良在庫、陳腐化品、キズモノ等は、思いきってバーゲンまたは廃棄処分を行ないます。〕
3. 消耗品等である貯蔵品を購入時の損金とする〔継続的に購入時に損金経理すれば購入時の費用として認められます。〕
<ポイント>
イ)1で評価方法を原価法から低価法へ変更する場合は、事業年度開始の前日までに届出が必要です。
ロ)3の対象となる消耗品等とは、次のようなものです。
・事務用品消耗品 ・広告宣伝用印刷物
・作業用消耗品 ・見本品
・包装材料 ・その他これらに準ずるもの
決算処分はなぜ節税になるのか?
例外的に季節品や流行遅れ商品は、評価損計上できます。
評価方法として低価法を選択すると、在庫の評価を少なくとも期末時の時価まで下げられます。しかし、その時価でも売れない商品というのはあるものです。この場合、低価法でもまだ棚卸資産を過大評価していることになり、利益も過大に計上されてしまいます。
1、「棚卸資産の評価損」を経費で落とす。
次のようなときには、低価法を採用していなくても「棚卸資産の評価損」を経費として計上し、利益が過大にならないようにするのが、ベストです。税法では、棚卸資産の評価損計上が認められる場合を定めており、それに合致すれば評価損を計上することが認められます。
売れ残った在庫を「評価損」として経費で落とす。
こういうときは、「評価損」を計上できる!
例えば季節もので売れ残った商品があって、今後、とても普通には売れそうにないことが明らかなときは、評価損を計上できるわけです。具体的には、商品の取得価額と、仮に売るとした場合の売却見込額との差額を評価損として経費処理します。
この場合、売却見込額はスクラップとしての処分価額ではなく、あくまで商品として売った場合の見込価額です。そこで問題になるのが、適切な売却見込額の決め方です。一体いくらなら適切なのか、根拠のある見積もりをするのは実務上困難ですし、客観性を求めればなお難しくなるでしょう。