金利が上昇傾向にあります。金利の上昇は、経済活動を行うほとんどの個人や団体になにがしかの影響を与えます。資金余剰の経済主体は金利上昇が好ましいでしょうが、借入が多い経済主体は悪影響が生じます。金利上昇の悪影響を受ける借入過多の経済主体として、変動型住宅ローン借入者、国などが頭に浮かびます。無論、その影響度は個々の借入金の依存度によって異なりますが、本稿では一定の仮定に基づいて、それぞれの経済主体ごとの借入金を元利金返済の原資となる収入と比較することにより影響度の違いを概観してみます。
まず、変動住宅ローン借入者について考えてみます。家計は企業や国と違い、大体の場合預金超過ですから金利上昇は歓迎されます。ただ、住宅ローン利用世帯は大きく借入超過となりますので、金利上昇が家計に悪影響を与えます。
固定金利なら影響はありませんが、今は住宅ローン利用者の7~8割が変動型であるといわれており、変動型を利用している個人は金利上昇の影響をもろに受けることになります。その影響割合は住宅ローンの大きさに応じて変わることになります。住宅ローン返済の原資は個人の年収です。最近は住宅価格が高くなり、住宅ローンの金額も大型化の傾向があり、首都圏では年収の10倍といった場合もあるようですが、一応年収の5倍から6倍程度が目安とされているようです。
仮に年収の6倍とすれば、年収800万円の世帯なら4,800万円が住宅ローンということになります。この家庭で0.5%の金利上昇があったとします。4,800万円の0.5%は24万円で月平均だと2万円になります。月2万円の支出増は一般家庭にとってはかなりの打撃ですが、切り詰めれば何とかできるレベルといえるかもしれません。
次に、国内で最大の借入主体である国家財政について見てみましょう。現在の国債残高は1,145兆円を超える巨額です。その元利金の返済原資は税収になります。26年度予算によれば、税金等の収入は約84兆円ですから、収入の約14倍もの借金を抱えていることになります。借金の額が巨額なだけに上昇幅が少なくても利上げのインパクトは大きくなります。国債の償還期間は通常10年なので、金利上昇効果は即時に出てくるわけではありませんが、徐々にボディーブローのように効いてきます。
1,145兆円の借金に対し、0.5%の利上げがフルに影響すると5.7兆円の利払費の増加になります。5.7兆円は歳出で見れば、ほぼ文教及び科学技術振興費に匹敵する額になります。返済原資となる租税収入の約7%になりますから、相当のインパクトになります。
収支の原則からすれば、利払費の増加は収入の増加、すなわち増税等で賄うのが常道ですが、現在の政治状況を見れば、増税は簡単ではありません。増税が難しいとなると、残る手段は新たな国債発行しかありません。つまり、借金の利息支払いのために新たな借金を重ね、それにより借金が益々増加し、さらに利払い費が増えるという悪循環に陥る恐れがあります。
金利上昇が経済主体に与える影響は借入金の依存度に応じて異なります。収入に対する借入金の倍率を上記のように住宅ローン借入者は6倍、国は14倍と仮定すると、0.5%の金利上昇の収入に対する割合は、住宅ローン借入者は3%、国は7%となります。
金利上昇は年収よりはるかに多い金額を借りている変動型住宅ローン利用者はかなり打撃ですが、年収を維持して節約すれば、何とか生計の維持は可能でしょう。やはり、最大の問題は国家財政への影響です。国としては、金利上昇はできるだけマイルドに抑えながら、その間に経済成長が加速して税収が増加することを望んでいるでしょうが、その実現は簡単ではありません。いうまでもなく、金利上昇は国家財政にとって相当な鬼門となります。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
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