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相続税の株の納税猶予について

相続税の株の納税猶予の書類を作成しました。

平成30年度税制改正で、非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例(特例措置)が創設されました。これは、平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日までの10年間の制度です。
平成30年1月1日の相続から、さかのぼって適用できるということで、平成30年2月に亡くなられた方の相続税に適用できるか検討し、相続人の方に制度の説明をしました。
申請にはたくさんの書類が必要ですので、かなりの時間が必要です。相続税の申告書の提出期限は亡くなられてから10か月ですが、納税猶予の申請は8か月までにしないといけません。そのため、まだ情報の少ない中、申請のための書類作成を始めました。相続税の申告書の作成と並行しての作業でしたのでかなり大変でした。
申請の手続きのため、愛知県産業労働部中小企業金融課の方と3~4回やり取りして、親切に教えていただき書類を作成し郵送しました。書類に不備もなく10月に認定が下りるという返事をいただいたのですが、遺産分割協議により、後継者である長男さんが会社の株以外に多くの財産を相続することにより、納税猶予額はかなり少なくなってしまいました。

納税猶予を受けると、今後、経営承継期間内は毎年、その期間経過後は3年ごとに「継続届出書」と書類を提出しなければなりません。他にもいろいろと制約があることを考えると、特例を受けるメリットは少なく、その旨納税者に説明し、納税猶予をどうするかご検討いただいた結果、「特例は受けない」となり、認定が下りる前に中小企業金融課へ相談して、申請を取りやめることになりました。

 株の納税猶予は、農地の納税猶予と考え方が違うようです。国税庁のホームページの特例のあらましには「特例経営承継相続人等が被相続人から非上場株式等を相続等により取得し、その会社を経営していく場合には特例経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち非上場株式等に係る課税価格に対応する相続税の納税が猶予され、特例経営承継相続人等が死亡した場合等にはその全部又は一部が免除されます」と書いてあるので、条件を満たしていれば、相続税の株の評価が100%下げられるのかと勘違いしてしまう方も多いと思います。
 納税が猶予される相続税の計算方法(特例措置)は以下の通りです。
1課税価格の合計額に基づいて計算した相続税の総額のうち、後継者の課税価格に対応する相続税を計算する
2後継者が取得した財産が「特例措置の適用を受ける非上場株式等のみ」であると仮定した相続税の総額のうち「特例措置の適用を受ける非上場株式等の額」に対応する後継者の相続税を計算する。その金額が納税猶予される相続税となります。

後継者である相続人が「株以外の財産を相続しない」のであれば納税猶予額は大きいです。しかし、通常、会社の後継者となる相続人は株以外にもたくさんの財産を相続することが多いと思います。「ぼくは会社を継ぐから、(換金性のない)株だけでいいよ」とはならないと思います。長男であれば、なおさら先祖代々の土地を守っていくという考え方もあるでしょうし、換金性のない株以外に、財産を多く相続すると考えられます。その場合、納税猶予額は低くなってしまいます。
ある国会議員の方が飲み会の席で「この制度は今年の目玉です!」とお話しされていましたが、「申請する書類が多い、内容がわかりにくい、手続きが大変」、「納税猶予の後も届け出等出さないといけない、長期のしばりがある、適用できなくなった場合リスクがある」等を考えると、よっぽど条件のあった場合でないと、この特例は使いづらいのではないかな、と感じました。
株の納税猶予は、「株以外に他の財産を誰がいくら相続するのか」によって全然違ってきます。この特例の適用を受ける場合はよく検討してくださいね。
事業承継写真
2019年10月3日更新
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