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事務所だより

◆事務所だより 7月号◆

電子帳簿保存法の電子取引データ保存の猶予改正
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◆改正された電子取引データ保存
 令和5年12月31日まで「宥恕(ゆうじょ)措置」が取られていた電子取引データ保存に関するルールが、令和5年の税制改正で変更されています。
 令和4年の税制改正で設定された、やむを得ない事情がある場合、税務調査等で出力書面の提示または提出に応じられれば、令和5年末までの2年間は電子取引データの紙保存も許されていたのですが、令和5年改正において宥恕措置は年末で廃止と明言されました。

◆宥恕措置は終わるが猶予措置ができる
 宥恕措置は終わりますが、「猶予措置」が新たに設定されました。
①保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
②税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求め及び電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしている場合
 上記の条件を満たしている場合は、改ざん防止や検索機能などの保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子データを単に保存しておくことができるとしています。
 宥恕措置との違いが分かりにくいようですが、宥恕措置では調査等での「ダウンロードの求め」に応じる必要はありませんでした。新たな猶予措置では紙保存した電子取引データも「ダウンロードの求め」に応じる必要がある、というのが異なる点です。
 公官庁内のDX・ICT化が急速に進む中、市井との温度差を感じ取ったのか、なし崩し的な改正に感じられます。法的には緩くなった半面、ペーパーレス化や事務合理化を推進し、宥恕期間終了時からのルールを策定しようとしていた企業は、改正によって振り出しに戻るケースもありそうです。

◆宥恕措置中の出力書面の取扱い
 宥恕措置中の電子取引データをプリントアウトした書面は、保存期間が満了するまではそのまま保存しておき、税務調査等の際に提示・提出できるようにしていれば問題はないとされています。





消費税2割特例が使える場合の簡易課税選択届の先延ばし
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◆インボイス制度負担軽減措置の2割特例
 インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者は、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(課税標準金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることができます。いわゆる2割特例です。
 2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった事業者が対象です。基準期間における課税売上高が1千万円を超える事業者等、インボイス発行事業者登録と関係なく事業者免税点制度の適用を受けないこととなる場合などは対象外です。
 この特例の適用に当たっては、事前の届出は必要なく、消費税の申告時に消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記すれば適用を受けることができます。
 また、2割特例の継続適用といった縛りはなく、課税期間ごとに2割特例を適用して申告するか否か判断することができます。 
 2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。

◆卸売業以外は一般課税で2割特例が柔軟
 2割特例は、一般課税と簡易課税のいずれの選択でも、適用することが可能です。
 簡易課税計算で、卸売業はみなし仕入率が90%ですが、それ以外の事業は80%以下です。そのため、卸売業以外の事業の場合、特例が適用できる期間は2割特例を使った方が納税額は同じか少なくなります。
 簡易課税での計算は、一般課税での計算とは違い、売上げの消費税よりも仕入れの消費税の方が多くなっても、マイナス分が還付される仕組みとはなっていません。マイナスに備え、一般課税で計算できる柔軟性を残すため、簡易課税の選択を先延ばしした方が良いかもしれません。

◆特例を適用した課税期間後の簡易課税選択
 2割特例の適用を受けたインボイス発行事業者が、2割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、消費税簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます。
 免税事業者から課税事業者になることで自社に消費税がどう影響してくるのかのシミュレーションをしっかり行い、こうした緩和措置をうまく活用してください。



2023年7月3日更新
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