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事務所だより

◆事務所だより 12月号◆

中小企業と独禁法
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◆独禁法の意義
 独占禁止法(以下「独禁法」)と聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。もしかすると、その名称から、特定の業界において非常に大規模なシェアを持つ一部の大企業に関係する法律で、それ以外の多くの企業には関係のない法律と思われるかもしれません。しかし、独禁法とは事業者の公正な競争を阻害する様々な行為を規制する法律であって、企業の規模を問いません。また、近年、企業間の適正な価格転嫁による賃上げの実現や個人事業主との関係でフリーランス保護などが問題になっており、中小企業の業績や労務環境の悪化のしわ寄せの原因が、実は独禁法に抵触する不当な行為による可能性もあります。
 これらのことから、独禁法は中小企業においても大いに関係のある法律といえます。
 改めて独禁法は、「公正かつ自由な競争を促進することを目的とする」法律(独占禁止法第1条)で、その保護の対象を「競争」そのものとしていますから、「競争者(事業者)」を直接保護することを目的とした法律ではありません。つまり、独禁法は、中小企業を保護するために大企業の行為を規制するのではなく、あくまでも企業間の競争における不公平な行為を規制します。したがって、仮に中小企業が大企業との競争に負けても、その競争間に不公平な行為がない場合には、独禁法の問題は生じませんし、また、可能性は高くありませんが、中小企業が大企業に対して不公平な行為をした場合には、中小企業が独禁法の規制を受けることになる可能性もあります。

◆不公平な行為とは
 独禁法において企業間の公正な競争を阻害する不公平な行為は、次の4類型に分類されます。
①不当な取引制限:談合、カルテル等
②私的独占:市場支配的な企業による排除行為等
③不公正な取引方法:優越的地位の濫用、再販売価格維持等
④企業結合規制:合併、分割、事業譲受等

◆最後に
 繰り返しになりますが、独禁法の目的は、中小企業を大企業から守ることではありません。大企業との取引適正化を実現するためには、中小企業自ら独禁法の趣旨や内容を理解し、取引に臨む姿勢が求められます。


相続対策と課税の公平
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 タワーマンション事件では、被相続人が事業承継の目的で取得したマンションの相続税評価は、財産評価基本通達(評価通達)によるのではなく、総則6項を適用した鑑定評価額によるとして追徴課税されました。
 相続人は相続税評価額をマンション取得のための借入金と相殺し、相続税額をゼロと申告しましたが、銀行に残された資料等から一連の取引が租税負担の軽減を意図したものであると認定されました。

◆相続対策に対する課税
 相続対策は、生前に財産を組替え、移転させることにより、課税価格を少なくして相続時の税負担を圧縮させるものですが、これらは法令に従う限り、本来、適法であり、実際、申告には路線価等に基づく評価が求められます。
 一方で、評価通達には、総則6項が別に定められており、通達による評価が著しく不適当と認められるときは、評価通達ではなく、国税庁長官の指示を受けて評価すると規定されていますが、その場合は納税者の意に反して課税されることになります。総則6項の「著しく不適当」がどの程度を指すのか明確に規定されていませんが、最高裁は実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合には、合理的な理由があると認められるので、評価通達によらなくても平等原則に反しないと判示しました。

◆租税法律主義との相克
 評価通達によらずに課税庁が評価するとなると、そこには課税庁の恣意性が働き、納税者にとっては自分の申告が適法か予測できず、いつ否認されるかわからない不安定なものとなってしまいます。
 総則6項を適用するのは、行き過ぎた税負担の圧縮が行われたときとされますが、その判断を納税者に求めるのは無理があり、課税庁が財産評価を決め、変更することを自由にできるのであれば、申告納税制度の根幹が損なわれてしまいます。

◆租税公平主義を意識した相続対策
 国税庁はパブリックコメントでマンションなど居住用の区分所有財産の評価について、市場価格と相続税評価額との乖離を埋める基準を公表しましたが、相続対策に対する判断基準を示しているわけではありません。課税庁には恣意的な課税をさせないため、適正な課税ルールを法律で定めることを求めつつ、納税者には今後も租税公平主義を意識した相続対策が求められそうです。


2023年12月1日更新
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