2025年6月3日付で、社会福祉法人・男鹿偕生会は破産手続開始の決定を受け、倒産に至りました。
WAMNET(社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム)には、2017年3月31日(平成28年度末)から2024年3月31日(令和5年度末)までの財務データが登録されています。本稿では、同法人の倒産に至る8年間の経過を、「無収入寿命」という新たな財務指標を用いて検討します。
■「無収入寿命」とは
「無収入寿命」とは、木下社長が提唱した新しい財務比率であり、将来的な売上高がゼロになった場合に、現在の純手元資金(=流動資産-棚卸資産-流動負債)だけで何カ月間、現状の経営を維持できるかを示す指標です。
通常企業では以下の式で算出されます:無収入寿命 = 純手元資金 ÷(固定費 ÷ 12)
ただし、社会福祉法人の場合は事業構造の特性に配慮し、次のように算出しました:無収入寿命(月) = 当期末支払資金残高 ÷(事業活動支出計 ÷ 12)
■男鹿偕生会の8年間の「無収入寿命」
決算期 支払資金残高(円) 年間事業活動支出(円) 無収入寿命(月)
2017.3.31期 26,212,653 313,367,928 1.007ヶ月
2018.3.31期 26,644,891 318,155,068 1.004ヶ月
2019.3.31期 -5,327,380 318,866,009 -0.200ヶ月
2020.3.31期 4,824,010 309,918,456 0.186ヶ月
2021.3.31期 -2,376,826 310,889,363 -0.091ヶ月
2022.3.31期 -8,922,166 301,407,025 -0.355ヶ月
2023.3.31期 -8,927,166 307,736,882 -0.348ヶ月
2024.3.31期 1,563,001 359,552,246 0.052ヶ月
※各年の支払資金残高はマイナスもしくは1ヶ月未満で推移しており、資金余力は極めて乏しい状況でした。
■資金繰りの実態
支払資金(=運転資金)が1ヶ月分にも満たない状態で事業継続が可能であったのは、介護報酬収入がほぼ即時に入金され、そのまま支出に充てられるキャッシュフロー構造に依存していたためです。
しかし、事業活動から得られる資金だけでは支出をまかなえず、不足分は経営資金としての借入金で補われていました。この間、設備資金に係る借入は完済されることなく残存し、むしろ長期の運転資金借入が増加しました。また、職員給付引当資産の取り崩しも、資金繰りの最後の手段として行われた形跡が見られます。