宅地と隣接する駐車場の評価単位
相続で土地を評価する場合、土地をどこで区切るかを決めなければなりません。
評価のために区切られる土地の1つ1つを評価単位と言います。評価単位を決める基本ルールは、次のものとなります。
◆土地は地目ごとに区分される
土地は用途によって、「宅地」「田」「畑」「山林」「雑種地」などの地目に区分されます。「宅地」は、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地とされます。「雑種地」は、どの地目にも属さない土地とされ、駐車場の敷地は「雑種地」となります。
土地は地目別に評価するのが原則ですが、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合、そのうち主たる地目からなるものとして評価します。
◆宅地や雑種地は利用の単位ごとに評価する
宅地は利用の単位となる1区画の宅地(1画地の宅地といいます)ごとに評価します。
同じ土地に居宅と隣接する自家用の駐車スペースがある場合、駐車スペースは自宅の維持・効用を果たすために必要なものとして、敷地全体を「宅地」として自用地評価します。
マンションとマンションの住人だけが利用する隣接の駐車場の場合も同様に、敷地全体を「宅地」として自用地評価します。
商業施設に併設する駐車場の敷地は、商業施設と一体利用されるので「宅地」として自用地評価します。
◆土地の評価に他人の権利が及ぶ場合
土地を他人に使用させる場合は、土地の評価には他人の権利が及びます。
賃貸アパートや賃貸マンションの敷地は、住人の権利が及ぶため、貸家建付地として評価します。
賃貸アパートや賃貸マンションに隣接する駐車場は、アパートやマンションの住人だけが使用する場合、建物と駐車場の土地は一体利用されているので一画地の宅地となり、全体を貸家建付地として評価します。
◆月極駐車場を経営する場合は自用地評価
土地所有者が自身で月極駐車場を運営する場合は、車の保管を目的とする行為とされ、賃貸借契約とは本質的に異なる契約関係となります。この場合、土地評価に利用者の権利は及ばず、自用地評価となります。
なお、コインパーキングなど駐車場事業者に土地を賃貸する場合は、その事業者の権利が土地に及びますので減価されます。
事務所だより令和6年9月号①より抜粋
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同族会社が借主の場合の貸宅地の評価
借地権が設定された被相続人の土地は、相続税では「貸宅地」とされ、自用地価額から借地権価額を控除した金額で評価します。
◆通常の地代の場合は、財産評価通達で評価
土地の使用の対価として通常、権利金を収受する慣行のある地域で通常の賃貸借契約により通常の地代を支払うとき、貸宅地は財産評価通達により評価されます。
なお、通常の地代未満の地代を支払う場合も以下の算式で評価します。
●貸宅地の価額=自用地価額×(1-借地権割合)
◆同族会社に貸付けする場合の評価
被相続人が同族関係者となっている同族会社にアパート経営をさせるため、自分の土地に借地権を設定する場合、借地契約を第三者との取引と異なる条件で行うと権利金等と実際の地代の水準に応じて借地権と貸宅地の評価は影響を受けます。
以下は、権利金等の支払がない場合です。
(1) 相当の地代を支払っている場合
権利金の認定課税を回避するため、権利金の支払に代えて相当の地代を支払う場合、借地権評価額は零、貸宅地の評価額は自用地価額の80%となります。
(2) 通常の地代を超え、相当の地代未満
貸宅地の価額は、実際に支払う地代の水準に応じて決まります。
●貸宅地の価額=自用地価額-自用地価額×借地権割合×{1-(実際の地代-通常の地代)/(相当の地代-通常の地代)}
ただし、貸宅地の価額が自用地価額の80%を超える場合は、被相続人が借地契約により土地利用の制約を受けていたことを考慮して80%を上限とします。
なお、(1)(2)とも、20%分は同族会社の借地権として同族会社の株式評価上、純資産価額に算入されます。
◆小規模宅地等の特例による評価減
さらに一定の要件を満たすと「貸宅地」は「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例が適用されます(200㎡まで50%減)。同族会社との賃貸借契約の締結、地代の支払(有償貸付)が前提となります。ただし、固定資産税程度の地代設定では営利性が認められず、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることはできません。適用には相続開始前3年を超えて被相続人等の貸付事業の用に供されていること(特定貸付事業は3年以内も可)、事業承継要件、保有継続要件を満たすことが必要です。
事務所だより令和6年10月号①より抜粋
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小規模宅地等の特例 -家なき子-
相続で子に居宅を引き継ぐとき、子は既に別居して生計を別にしているが、持ち家ではない場合、居住用宅地について一定の要件を満たすことにより、小規模宅地等の特例を適用して土地の評価額を最大80%(土地面積330㎡まで)減額して相続税の負担を軽減することができます。一般に「家なき子特例」と呼ばれますが、子に限らず親族に適用することができます。
◆被相続人の要件
(1)被相続人に配偶者がいないこと。
(2)相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと。
◆取得者の要件
(1)被相続人の居住用宅地を相続又は遺贈により取得すること。
(2)居住制限納税義務者または非居住制限納税義務者のうち日本国籍を有しない者ではないこと。
(3)相続開始前3年以内に日本国内にある取得者、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族または取得者と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く)に居住したことがないこと。
(4)相続開始時に、取得者が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
(5)相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
◆老人ホームに入居の場合
相続開始の直前に被相続人の居住の用に供されていなかった場合においても、相続開始の直前において要介護認定、要支援認定等を受けていたこと、老人福祉法等に規定する老人ホーム等に入居等をしていたこと、建物を事業の用、被相続人等以外の者の居住の用に供していないことの要件を満たすときは、入居等の直前まで被相続人の居住の用に供していた宅地等は特定居住用宅地等に該当し、先に掲げた要件を満たすときは特例の適用を受けることができます。
◆孫に遺贈することもできる
「家なき子特例」は被相続人の親族に適用されますので、子に既に持ち家がある場合は持ち家のない孫に居宅を遺贈し、先に掲げた要件を満たすときは、特例の適用を受けることができます。なお、孫は相続人ではないので相続税は2割加算となります。孫世帯の生活設計と合致すれば居宅を承継させる有効な方法となるかもしれません。
事務所だより令和6年11月号②より抜粋
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帰属所得と財産分与
2023年の共働き世帯数は、専業主婦世帯数の3倍近くになり、家事・育児は夫婦で共に担う時代になりましたが、平成の初期まで専業主婦の世帯数の方が多く、配偶者の内助の功で家庭が運営されていました。
◆帰属所得は課税されない
配偶者が家庭内で家事育児を行うと、その役務提供には経済的価値が生まれます。これを帰属所得といいます。しかし、家事育児労働に対価が支払われることはなく、課税もされません。これは家庭内の労務報酬の算定が実際には困難であることによります。また所得税は一人ひとりに課税されるのですが、家計を消費単位として見た場合、帰属所得は家計に包含されてしまうので課税しないという見方をしているのかもしれません。
◆財産分与で2分の1を清算
離婚すると財産分与が行われます。婚姻中、各人の給与や事業などから得た財産と共有名義の財産、帰属不明の財産は共有財産となり、その2分の1が夫婦間で清算されます。
給与や事業収入などで得た財産は、婚姻中は各人の特有財産なのですが、離婚すると夫婦の協力により得られた共有財産として財産分与されます。将来、受け取る厚生年金も、婚姻期間に対応する年金額の2分の1は財産分与の対象となります。
◆財産分与に対する贈与課税
財産分与は資産の贈与ですが、贈与課税はされません。これは婚姻中に生じた財産分与請求権が離婚時に行使され、同等の価値の財産を得るためとされています。ただし、分与額が多すぎる部分や相続税の回避と認められる場合は贈与課税されますので注意しましょう。
また、財産分与者は財産分与義務が消滅して得られる利益と財産分与により失う財産の価値が見合うため、課税されません。ただし、不動産など譲渡所得の基因となる資産が移転する場合は、財産分与時に実現する譲渡所得に課税されますので、こちらも注意しましょう。
◆死亡すると相続財産に変わる
夫婦が死別すると財産は遺贈されたものを除き相続財産となり、配偶者はその法定相続分を取得できます。ここでは財産分与のときの共有財産は認識されず、相続財産になっています。配偶者には相続税の税額軽減が適用され、老後の生活保障に一定の配慮がされています。
事務所だより令和6年11月号②より抜粋
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相続放棄の手続きの実際とその流れ
◆相続における3つの選択
相続が発生すると相続人となる者は、単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する)、もしくは限定承認(プラスの財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ)、または相続放棄(遺産の相続を放棄しプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない)のいずれかを選ぶことになります。
相続放棄を選択するのは、一般的に借金が多い場合と考えられますが、借金がなくとも相続にかかわりたくない、財産分与ゼロでハンコを押すのはしゃくだなど、他の理由であっても自分の意思で選べます。
◆相続放棄の手順
(1)家庭裁判所へ相続放棄を申述する
相続放棄の申述は,民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所にしなければならないと定められています。申述書に申述内容を記入し、被相続人の住民票除票又は戸籍附票や申述人(放棄する人)の戸籍謄本など(=申述人の被相続人との関係性により必要書類は変わってくる)を添付して家庭裁判所に書類を送ります。
(2)家庭裁判所から「照会書」が届く
申述後、家庭裁判所から「照会書」が届き、①誰かに強要されたり、②他人が勝手に手続きしたり、③相続放棄の意味がわからず手続きしていないかなど、その申述が本人の真意によるものかの確認がなされます。
書類をよく読んで、真意である旨を「回答書」に自筆で記載し期限内に返送します。
(3)「相続放棄申述受理通知書」で完了
家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」(相続放棄が無事に認められた旨の通知)が届いて手続き完了となります。
なお、他の相続人が相続手続きをする際に「相続放棄申述受理証明書」の原本が必要となります。通常は、受理通知書が届いた後に受理証明書の交付申請を行いますが、事前に受理証明書の交付申請を行えば受理通知書に同封されて受理証明書も届きます。
◆相続放棄のデメリット
相続放棄が完了すると後から撤回できないため、相続放棄完了後に莫大な財産が見つかったとしても、その財産を引き継ぐことはできません。また、他にも個々の事情で発生するデメリットもあり得ます。放棄に際しては、司法書士などの専門家に相談しながら手続きすることをお勧めします。
事務所だより令和7年2月号②より抜粋
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小規模宅地等特例の適用可否
◆核家族社会の老人の選択
高齢化社会になり、親が老人ホームに入所するケースが増えており、寿命の内、健康寿命を超える要介護期間が、男性9〜10年、女性12〜13年程度とされているので、最近の傾向としては、介護が必要となってからの入所よりも、元気なうちから入所を決める傾向になっています。
◆居住用小規模宅地の相続特例
平成25年度の税制改正において、老人ホームへの入所まで居住していた自宅の敷地に係る相続税の小規模宅地等の特例の適用について、一定の要件の下、その自宅の敷地は、相続開始直前における被相続人の居住供用宅地等の概念に該当することになる旨が法令に明記されました。
一定の要件とは、次の2つの要件です。
1.被相続人が要介護等認定者に該当(認定申請中に相続開始で事後認定も可)
2.入居老人ホームが老人福祉法等規定該当
◆小規模宅地の取得者要件
なお、宅地等の取得者ごとに係る要件もあります。具体的な判定としては、次の各場合には小規模宅地等の特例が使えます。
(1)配偶者が自宅に引続き居住の場合の配偶者が相続
(2)夫婦で老人ホーム入所後、留守宅の自宅を配偶者が相続
(3)被相続人が老人ホームに入所後、引続き居住をする同居親族が相続(生計一は要件ではない)
(4)(2)の物件を(3)の同居親族が相続
(5)(3)の引続き居住の同居親族が対象の自宅を建替えた後に引続き居住継続して相続
(6)被相続人が老人ホームに入所後、留守宅を別居の親族の「家なき子」が相続
なお、(3)の同居親族については、以下の3要件の具備が必要です。
1.相続開始直前に被相続人の居住用敷地に居住している
2.相続税の申告期限まで当該宅地等の所有継続
3.相続税の申告期限まで当該宅地等での居住継続
◆ついでに言えば
ちなみに、被相続人が老人ホームに入所後の留守宅に生計一親族が入居した場合は、要件不要で適用です。また、留守宅を賃貸した場合、特定居住用宅地等としての特例は使えませんが、貸付事業用宅地としての小規模宅地等の特例を使うことができます(3年以上の期間貸付けが条件)。
事務所だより令和7年6月号②より抜粋
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